23. リニアレールブレーキのブレーキ力強化方法

 高速走行時の停止距離短縮に資するため、交流電磁石(電機子)を使ったリニアレールブレーキのブレーキ力を増大する方法を開発しました。
 リニアレールブレーキは渦電流レールブレーキと同様に電機子とレールとの間に働く電磁的な作用を利用してブレーキ力を発生しますが、動作に必要なエネルギーを自己発電で得るため、停電時の使用が可能であり、また、同じ理由からレールの温度上昇の抑制が可能です。
 従来はレールの温度上昇の抑制に主眼を置いたリング巻構造電機子(図1)を用いていましたが、ブレーキ力の強化と軽量化には限界がありました。そこで、過度なレール温度上昇を避けるために編成への搭載台数を減らすことを前提に、単機当たりのブレーキ力を強化する手法を考案しました。

 新たに考案した手法では、集中巻構造電機子(図1)とバッテリーによる無停電の補助電源を用います。集中巻構造ではレールに発生する正弦波状の磁界に歪みを重畳することで、リング巻構造と比べて新幹線の最高速度付近でのレールの温度上昇が最大で約1.8倍となるものの、1.5倍程度までのブレーキ力増大が可能です。
 これに無停電の補助電源を併用して自己発電のみの場合よりもブレーキ力を強化する機能を追加した通電システムを組み合わせることで、試作電機子による試験でブレーキ力を約1.9倍まで高められることを実証しました(図2)。

 本手法により、編成のブレーキ性能を維持した場合、リニアレールブレーキ搭載台数および付加質量を概ね半減できます。ただし、レールの温度上昇が約1.3倍となるため、緊急用途に向いた手法と考えます。
 新幹線で想定される最も長い編成について、最高速度付近からの制動距離をディスクブレーキのみの場合より約1割短縮する条件では、レールの温度上昇が約1.8度と試算されます。