25. 割引きっぷの発売上限数の制御によるイールドマネジメント手法

 鉄道の収入増のための取組みのひとつとして、イールドマネジメントを適用した特急列車等の指定席用割引きっぷの発売上限数の制御が挙げられます。しかし、その増収効果の定量化は難しく、収入を最大にする発売上限数を理論的に算出できないという課題がありました。
 そこで、各種のきっぷの需要と、希望のきっぷを買えなかった旅客の次善策の選択行動を推定して、割引きっぷの発売上限数を算出する手法を開発しました(図1)。

 需要に関しては、過去の指定席販売実績データや暦配列から、運行日・列車・乗車区間・きっぷの種類・予約タイミング別の需要推定手法を考案しました。次善策の選択行動に関しては、Webアンケート調査を実施して結果を分析し、旅客が前後の列車への転移、より高額なきっぷへの転移などを選択する割合を、前後の列車との時間差やきっぷの価格差に応じて算出するモデルを作成しました。
 また、開発した発売上限数の算出手法を実装した意思決定支援システムを作成しました(図2)。

 このシステムを用いて、ある3連休に運行する実際の特急列車を対象として割引きっぷの発売上限数を試算し、その結果を指定席販売に適用する社会実験を行いました。
 本手法を用いずに担当者が策定した発売上限数を適用した場合の想定収入と比較して、発売上限数の制御の効果以外も含め5〜11%の収入増となったことを確認しました。

 本手法の活用により、割引きっぷの販売戦略の策定における意思決定の支援が可能となり、業務負荷を軽減できます。