26. 先頭車衝突試験と衝撃挙動シミュレーション

 衝突事故時における乗客や乗務員の被害軽減策を検討する場合、実物大の編成列車による試験は規模が大きく困難であることから衝撃挙動シミュレーションが有効ですが、その精度が重要となります。

 そこで、シミュレーションの精度向上を目的として、実物大の試験体による衝突試験を実施しました。試験体は廃用のステンレス鋼製先頭車から切り出して製作し、これを取付ける専用の走行台車を製作して、高い衝撃エネルギー条件での試験を実現しました。試験条件は、過去に発生した踏切重大事故の平均衝突速度54km/hで剛体壁に衝突させることとしました。
 この試験により主要構造部材(中はりや側はりなど)の変形や破断などの車体の衝撃変形破壊挙動および衝撃荷重-変形量特性を定量的に調査しました(図1、図2)。

 また、衝突試験を模擬したFEM解析結果と試験による結果を比較検証したところ、ステンレス車体では、様々な速度で引張試験を実施することで得られたひずみ速度依存性、およびスポット溶接やアーク溶接の破断特性などを解析モデルに反映することにより、車体の変形挙動や荷重-変形量特性などが再現でき、最大荷重の誤差は約12%、最大変形量の誤差は約10%であることを確認しました(図2、図3)。
 これにより、衝突事故時の各種挙動を検討することが可能となりました。