28. 90GHz帯ミリ波による対列車通信システム

 現在使用されている列車無線などの対列車通信システムは、1チャンネルあたりの帯域幅が数kHzと狭く、伝送できる情報量が限られています。
 そこで、数百MHz〜数GHzと広い帯域幅を確保でき、大容量の情報伝送が期待できる周波数帯として、これまで鉄道で使用されていない90GHz帯ミリ波に注目し、当該周波数帯を用いた対列車通信システムの要素技術の開発を行いました。

 鉄道の高架上やトンネル内での測定試験とシミュレーションにより、鉄道環境における90GHz帯ミリ波の電波伝搬特性として、自由空間よりも減衰が少ないなどの特徴を持つことが分かりました。また、気象(降雨や着雪など)による減衰量などの無線回線設計に必要なデータを取得しました。
 そして、90GHz帯ミリ波と光ファイバ無線(Radio over Fiber : RoF)技術を組み合わせた対列車通信システム(図1)を提案し実証実験を実施しました。

 その結果、アンテナの設置角度の違いにより一部でデータ伝送速度の変動がありましたが、約240km/hで走行する列車の移動に合わせて基地局に接続された沿線局を光スイッチで高速で切り替えることで、沿線局の切り替え時にも高いデータ伝送速度を維持しつつ、最大で約1.5Gbpsのデータ伝送が可能であることを実証しました(図2)。
 さらに、無線伝送品質を推定するシミュレーションを実施した結果、300km/h以上の速度域においても本システムが適用可能である見通しを得ました。

 本成果により、現行の対列車通信システムの750倍以上の情報伝送が可能であることを示しました。これにより、走行車両の状態情報や防犯カメラ映像の地上へのリアルタイム伝送等の実現が期待できます。