26. 制動時の劣化現象を解明する車輪レール転がり接触シミュレーション

 車輪とレールの接触による損傷には、制動に伴う車輪踏面の凹摩耗や空転・滑走時に生じる車輪フラットなど、発熱に関係すると考えられるものがあります。
 そこで、これらの現象を解明するツールとして、従来の車輪・レール転がり接触シミュレーション手法(図1)を機能拡張し、熱伝導解析と構造解析との連成(熱・構造連成)による弾塑性計算が可能な解析手法を開発しました。

 この解析手法では、車輪の降伏応力の低下など、温度上昇に伴う材料の特性変化を組み込み、温度上昇とそれに伴う熱応力や車輪・レールの接触部における弾塑性変形、摩耗による形状変化を同時かつ詳細に計算することができます(図2、図3)。
 ブレーキ試験装置(図4)による実験結果との比較により、車輪踏面直下の内部温度を10%の誤差で再現できることを確認しました(図5)。

 車輪・レール転がり接触シミュレーション手法は、計算上も車輪を転動させながら、車輪・レールに作用する応力や接触部の位置、力の大きさ・方向など、実験や走行試験では計測が難しい接触状態を詳細に示すことができます。
 今回の熱・構造連成機能を追加することで、車輪の凹摩耗や熱き裂など、車輪やレールに生じる損傷に対して、現象の解明や対策法の提案などに活用できます。