28. 地震時の盛土の損傷過程の解明

 盛土の耐震性能評価では、円弧状に滑り破壊すると仮定して、変形量を算出しています。
 しかし、この手法では実際の地震時の盛土被害を説明できない場合があります。
 そこで、遠心模型実験装置による振動台実験を実施し、地震時の盛土の損傷過程を詳細に把握しました。
 その結果、図1に示すように振動により徐々に変位が蓄積し、ある変位レベルから急増した後、滑り線が発生して脆性破壊に至ることを確認しました(図2)。
 また、盛土内部の状況を画像解析により観察し(図2)、のり尻付近からひずみが蓄積し、徐々に盛土内部に進展していくことも把握しました。
 一方、遠心模型実験において変位が急増した時点で盛土内に発生しているせん断ひずみの最大値はのり尻付近の9.6%(図2の③)で、この値は盛土材の変形特性を用いて図 3 に示すように損傷レベルを定義すると、盛土材のひずみが急増する損傷レベル3に達する直前の値(図3の③)とほぼ整合しています。

 以上のことから、滑り線の起点となるのり尻付近のせん断ひずみが盛土材の損傷レベル3に達すると変位が急増し、盛土材のピーク強度に達する損傷レベル4に至ると滑り線が発生し脆性破壊することが分かりました。
 このように、実際の地震被害を説明可能な盛土の損傷過程を明らかにしました。
 この成果は、盛土の詳細な耐震性能評価や地震後の原因究明等に活用可能です。