23. 高速パンタグラフ試験装置を用いた集電系HILS

 パンタグラフの性能評価は、架線の振動の他に、走行によるしゅう動や架線偏位が存在する環境下で実施することも重要です。
 これまでも集電系HILS(Hardware-In-the-Loop Simulation)として、高い周波数までの架線振動を考慮した性能評価が可能なシステムを開発しましたが、しゅう動や架線偏位の影響を考慮できませんでした。
 そこで、高速パンタグラフ試験装置に集電系 HILSを実装することで、この課題を解決しました。

 本HILSは、考慮可能な架線振動は低い周波数に限定されるものの、しゅう動や架線偏位、さらには環境温度・湿度・通電による温度上昇や部材の摩耗の影響も考慮可能です(図1)。
 高速パンタグラフ試験装置は可動部質量が既開発の集電系HILSと比べて大きく、複雑な周波数特性を有するため、高速パンタグラフ試験装置に適したHILSの補償器を開発することで、パンタグラフが支持点の間隔を走行する周期(約2Hz)までの架線振動を考慮可能としました。

 これによって、これまで現車試験でしか実施できなかった、パンタグラフの適切なダンパ定数の選定や、電車線設備の安全性に関わる重要な指標であるパンタグラフ通過時の支持点における電車線の押上量の評価を、定置で行うことができるようになるため(図2)、より高性能なパンタグラフをより効率的に低コストで開発することが可能となります。