26. 鉄道騒音の解明・予測のための音波伝播の可視化手法

 鉄道騒音には、音源が高速で移動する、音源周りには車体や防音壁などの反射物が存在するという特徴があり、その現象解明や予測を行うためには音の伝播の様子を捉えることが重要です。
 そこで、移動音源から放射された音が空気中を伝播する様子や防音壁近傍で音波が回折する挙動を可視化する手法を構築しました。

 音波の可視化には偏光高速度干渉計を使用しました(図1)。
 これは、音による空気の微小な圧力変動を光の位相変化として観測できることを利用し、高速度カメラでレーザー光の干渉縞を撮像する装置です。
 また、本手法を用いて得られた波面に関する可視化情報から球面波の理論式に基づいて特定の断面内の音圧分布を推定する手法を開発しました。

 本手法を1/80縮尺の防音壁模型に適用した結果、防音壁による音波の反射や干渉、回折減衰の様子を可視化できることを確認しました(図2)。
 さらに、超高速列車模型発射装置を用いて列車模型に超小型スピーカーを取り付けた移動音源から放射された音の波面を可視化し、ドップラー効果により周波数が変調する様子を観測できることを確認しました(図3)。
 空気中を伝播する音波のドップラー効果を実験的に可視化した例はこれまでありません。

 これにより、今後、車体と防音壁の間の多重反射の物理モデルの妥当性や、より複雑な構造物条件での音波の反射・干渉・回折の評価が可能となることが期待でき、鉄道沿線騒音予測手法のさらなる精度向上に活用できます。