24. 新幹線のパンタグラフ停止位置近傍におけるトロリ線摩耗率増加機構

 新幹線では駅構内などの低速区間でトロリ線の摩耗率が高く、トロリ線張替の頻度が高いためメンテナンスコスト削減の妨げとなっています。
 そこで、低速で摩耗率が増加する理由を明らかにするため、トロリ線の摩耗率と走行速度との関係把握、摩耗したトロリ線の断面組織観察、および広範な速度域におけるしゅう動実験を行いました。

 駅構内のトロリ線の摩耗分布と走行速度のデータから、トロリ線摩耗率は速度が低くなると急激に増加する特性を有することを明らかにしました(図1)。
 また、実験により摩擦係数の速度依存性を測定した結果(図2)および電子顕微鏡による実トロリ線の断面金属組織の観察・解析結果(図3)から、低速では摩擦係数が増加することでデラミネーション摩耗と呼ばれる剥離状の摩耗が促進され、摩耗率が高くなっていると考えられました。

 デラミネーション摩耗の抑制策として、潤滑による摩擦係数低減が考えられたため、低速の走行状況を模擬できる新たな室内試験装置(図4)を製作し、グリースによる摩耗低減効果を調べたところ、グリースがトロリ線に付着している間は摩耗率が1/4以下に減少することを確認しました(図5)。今後は、実設備にて外部潤滑による摩耗低減効果の持続性を検証する予定です。