23. 水素燃料電池車両の安全性評価
水素燃料電池車両の社会実装のためには、特別認可等の手続きを経ずに、水素燃料を高圧ガスとして鉄道車両へ搭載することを可能とする省令等の技術基準の整備が必要です。 そのためには、水素燃料電池車両のリスクアセスメントを事前に実施しておく必要があります。
そこで、これまでの鉄道事故の調査結果に基づきシナリオを作成し、数値解析等も含めたリスクアセスメントを実施するとともに、漏洩や圧力の検知装置、安全弁や止弁、構造等の安全対策を提案しました(図1)。 特に、トンネル内のような閉鎖空間での水素の流動については、水素燃料電池車両の屋根上機器の配管からの少量の漏洩や、火災時の熱式安全弁からの大量放出についてシミュレーションによる検証を行いました。 その結果、少量漏洩に関しては、滞留した時にリスクの高いと考えられる領域でも、着火濃度の4%以下となることが分かりました(図2)。 また、大量放出に関しては、着火を前提としたシナリオとして、水素が爆発した場合の避難位置における人体に加わる圧力等を試算し、許容範囲の20kPa以下となることが分かりました(図3)。
これらの成果を、有識者による「水素燃料電池鉄道車両等の安全性検証検討会」(主催:国土交通省、事務局:鉄道総研)に提案し、技術基準の整備に寄与しました。