5. トンネル火災時熱気流の多機能実験装置と予測手法
トンネル火災時に発生する煙を含む高温の熱気流の挙動は、避難環境や換気計画、火災検知設備の配置などに大きな影響を及ぼします。このため、火災時の熱気流の温度、速度、広がりといった流動性状を把握することが重要です。しかし、実際のトンネルでは、車両や枝坑の存在、勾配、風などの多くの要因が関連するため、熱気流の挙動を正確に見積もることは困難です。
そこで本研究では、実トンネル覆工とほぼ同等の吸熱特性を再現できる壁構造を備え、車両、枝坑、勾配、風などの各条件を切り替えられる機能を有する、実大の約10分の1スケールの多機能トンネル火災模型実験装置(図1) を開発しました。本坑部は全長21.6mと長大で、世界的にも類例が限られる規模です。これにより、天井下の温度上昇量、速度、および層厚さが火源からの距離に対して指数関数的に減衰すること、また、車両の存在により層厚さが抑制されることを明らかにしました。また、模型スケールで再現性を確認した数値シミュレーション手法を用いて、実大トンネルを対象とした解析(図2) を実施しました。
これらの模型実験や数値シミュレーションによる詳細解析を踏まえて、熱気流の温度、伝播速度、層厚さを予測するための簡易式を構築しました(図3)。本簡易式を用いることで、鉄道事業者等がトンネル火災時の避難安全、換気運用、枝坑等の付帯空間への影響評価、対策設備配置などを検討する際に、必要な値を迅速に見積もることができます。なお、特定のトンネルや想定シナリオについて高精度な評価が必要な場合には、数値シミュレーションによる詳細な予測も可能です。
