第335回 鉄道総研月例発表会

日時 2019年12月16日(月) 13:30~17:00
場所 東京 日本工業倶楽部 大ホール
主題 車両技術と浮上式鉄道技術の在来方式鉄道応用に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
車両技術に関する最近の研究開発

車両分野では、毎年50件程度の研究開発テーマを実施している。ここでは、車両分野の取り組みの中から、新幹線車両の上下方向の振動をセミアクティブダンパとアクチュエータを用いて低減し、乗り心地を改善する上下制振制御システムの開発と、フラットなどの車輪踏面の損傷が台車に及ぼす影響を評価するための、車輪踏面損傷をもつ台車の数値計算モデルの構築について紹介する。
 主要な研究開発成果(2018年度) 「新幹線車両向け上下制振制御手法」

発表者
車両構造技術研究部長 石毛 真

13:45~14:05
車両機器の異常振動調査を目的とした振動分析記録装置の開発

車両機器で発生する異常振動の調査に用いることを目的として短期間の使用を前提とした小形の振動分析記録装置を開発した。本装置では、振動測定・分析・記録機能を一体化させることで計測配線や電源配線を省略し、簡易な取り付けを可能としている。さらに、本装置を用いて取得されたデータを分析することで、振動速度実効値の評価や機械学習による異常検知を行うことができる。本発表では、本装置の概要について紹介するとともに、本装置を実際に車両に取り付けて振動測定を行った結果について報告する。

発表者
車両制御技術研究部 動力システム研究室 副主任研究員 髙重 達郎

14:05~14:25
新しい連続PQ測定システムの開発

車両の走行安全性評価を目的として実施する輪重横圧測定(PQ測定)手法の一つである新連続法は、輪重、横圧などを連続的に精度良く測定できる手法であり、広く活用されている。しかし、現行システムの各装置は、開発からの経年により老朽化、陳腐化傾向にあり、今後の測定に支障をきたす恐れがある。そこで、これらの対策と併せ、測定精度の向上と測定作業の省力化を図るため、新しい処理装置とスリップリング装置を開発したので、その概要を紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.8 「汎用計測機器を用いた省力化連続PQ測定システムの開発」

発表者
鉄道力学研究部 車両力学研究室 主任研究員 鈴木 貢

14:25~14:45
駆動力変動を考慮した編成内の車体前後振動解析

鉄道総研では、車両間に作用する力(自連力)の検討を目的として、緩衝器の特性を精緻にモデル化した編成車両の上下・前後方向連成運動の数値解析手法が開発されている。本手法はこれまで著大な自連力が生じるシナリオで活用されてきたが、近年は編成内の微小な車体前後振動への適用可能性について検討を行っている。本発表では、駆動力変動時の現車試験結果と数値解析結果を比較し、本数値解析手法の有効性について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.32 No.8 「駆動力変動を考慮した編成内の車体前後振動シミュレーション」

発表者
車両構造技術研究部 車両運動研究室 副主任研究員 坂本 裕一郎

14:45~15:05
燃料電池ハイブリッド電車の開発

水素エネルギーを活用し、省エネルギー化や環境負荷低減に貢献する次世代に相応しい鉄道車両として、燃料電池ハイブリッド電車の開発を行っている。今回、電力変換装置をはじめとする各機器の小型化・高性能化を行い、客室空間を確保するとともに、加速性能を電車並みに向上させた実用に近い構成を実現した。本発表では、この開発した燃料電池ハイブリッド電車について紹介する。
※ 第335回月例発表会「燃料電池ハイブリッド電車の開発」において、
スライドP12の燃料電池用電力変換装置の質量が1,260kgであるところ、予定質量の1,350kgを記載してございました。
訂正の上、お詫び申し上げます。(2021年2月1日 鉄道総研車両制御技術研究部)
 鉄道総研報告 Vol.31 No.6 「燃料電池電車のエネルギーシミュレーション手法」
 NewsRelease 「燃料電池ハイブリッド試験電車の基本走行性能を確認」
 NewsRelease 「新しい燃料電池ハイブリッド試験電車の完成」

発表者
車両制御技術研究部 水素・エネルギー研究室 副主任研究員 小川 賢一

15:05~15:45
休 憩

15:45~16:00
浮上式鉄道技術の在来方式鉄道応用に関する最近の研究開発

浮上式鉄道技術研究部は「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画」に基づいて浮上式鉄道に関する基礎研究に取り組んでいる。また、浮上式鉄道の研究開発で培った技術(超電導技術、リニアモータ技術等)をベースにした在来方式鉄道への応用研究も実施している。講演では、浮上式鉄道の基礎研究に関連して、高温超電導磁石の開発状況や部分放電に着目した地上コイルの絶縁診断手法を、在来方式鉄道への応用研究に関連して、リニアレールブレーキの開発状況を紹介する。
 主要な研究開発成果(2018年度) 「リニアレールブレーキのブレーキ力強化方法」

発表者
浮上式鉄道技術研究部長 長嶋 賢

16:00~16:20
電磁界解析による車両用非接触給電システムの設計

近年、非接触による電力伝送(非接触給電)の技術開発が進展しており、交通分野では、電気自動車への走行中非接触給電の開発などが盛んに行われている。本研究ではこれまでに車両に搭載可能な非接触給電装置を試作し約40kWの電力伝送を実証した。非接触給電装置は、レール近傍に給電用コイルを設置する構成のため、レールでの損失を正確に把握することが重要となる。本発表では、電磁界解析を用いたレール損失分析およびシステム設計について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.5 「高電力密度非接触給電システム用コイルの設計」
 鉄道総研報告 Vol.29 No.11 「鉄道車両用非接触給電装置の電力供給性能検証」
 RRR Vol.76 No.9 「バッテリー搭載車両に非接触で充電する」

発表者
浮上式鉄道技術研究部 電磁システム研究室 副主任研究員 浮田 啓悟

16:20~16:40
営業列車を用いた地上設備データ収集システムの開発

鉄道設備の状態監視を効率的に行うため、センサと無線を組み合わせた無線センサをトンネルや橋梁など監視対象に設置し、近くを走行する列車とすれ違う際に温度や加速度データを収集する手法を開発した。低コスト用は無線にBluetoothを使用し、低消費電力用は列車から無線センサの起動状態を制御できるようにした。2種類のシステムについて新幹線で実証試験を行い、通過駅に設置した無線センサのデータを高速走行列車により収集可能なことを確認したので報告する。
 鉄道総研報告 Vol.32 No.3 「浮上式鉄道用地上コイルのセンサデータ収集システムの開発」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.1 「センサタグと保守用車間の路車間通信による地上コイル状態監視」
 RRR Vol.76 No.7 「地上設備の監視データを営業列車で低コストに収集する」

発表者
浮上式鉄道技術研究部 低温システム研究室 主任研究員 田中 実

16:40~17:00
鉄道用フライホイール蓄電システム向け超電導磁気軸受の開発

電圧降下対策、回生失効対策などに有効な鉄道用蓄電システムとして、液体冷媒を使わず取扱いが容易で省メンテナンス、低コストな超電導フライホイール蓄電システムの実用化開発を進めている。高性能線材および鉄道総研独自のコイル化製法により大荷重対応超電導磁気軸受(SMB)を開発して158 kNで安定浮上可能なことを実証した。また浮上回転状態におけるSMBの信頼性・耐久性評価が可能な試験装置についても報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.5 「鉄道用フライホイール向け超電導磁気軸受の信頼性評価試験」
 鉄道総研報告 Vol.32 No.3 「鉄道用フライホイール向け大荷重対応超電導磁気軸受の開発」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.1 「超電導フライホイール蓄電システムの信頼性検証と鉄道への応用」
 鉄道総研報告 Vol.21 No.9 「超電導バルク体と超電導コイルを用いた磁気軸受の載荷力密度」

発表者
浮上式鉄道技術研究部 低温システム研究室 副主任研究員 宮崎 佳樹