電車駆動用モーターの高効率化
最近の電車はインバータで制御される交流電動機で駆動されていますが、そのようなインバータ電車では、回生ブレーキを用いることで従来の抵抗制御電車等に比べて大幅に消費電力量が削減されています。消費電力量が減少したインバータ電車では、消費電力量に占める電動機中の損失の割合が高く、更なる省エネ化を達成するためには、電動機の効率を向上して損失を減らすことが重要です。
そこで、現在広く用いられている誘導電動機を対象に、電動機の効率を向上するための研究開発を行いました。まず、材料の選定等の基本的な設計手法により高効率化を図る事を検討しました(文献1)。次に、磁界解析を行い、回転子導体の表面において、出力に寄与せずに損失を発生させる電流が流れていることを明らかにし、これによる損失を低減するための新しい回転子構造を考案しました(文献2)。そして、これらの高効率化手法を適用した高効率誘導電動機を試作し(図1)、試験等により性能を評価した結果、その効率は約96%であり、従来機に比べて約3%効率を向上できました。さらに、走行シミュレーションにより電車で使用した場合の省エネ効果を試算したところ、効率の向上により消費電力量を6~11%削減できることが分かりました(図2)(文献3)。
誘導電動機の高効率化には、電動機本体のハードウエアを変えるだけでなく、その電源となるインバータの出力電圧波形を改善することも効果があるため、出力電圧波形の最適化にも取り組んでいます(文献4)。
なお、本研究の一部は、国庫補助を受けて実施しました。
また、過去には永久磁石同期機を用いた全閉形主電動機の開発を行ってきました。永久磁石同期機を用いた全閉形主電動機は、効率が高くて省エネなだけでなく、省保守・低騒音であることから、最近では多くの電車で採用されています。