車軸軸受のフレッチング摩耗抑制手法
1.概要
鉄道車両の安定走行に欠かせない車軸軸受を構成する内輪と後ぶたの接触部では、微小な相対すべり運動によってフレッチング摩耗が発生します(図1)。そこで、部品点数を増やさずに車軸軸受のフレッチング摩耗を抑制する手法を考案しました。
2.特徴
車軸軸受のフレッチング摩耗は、内輪と後ぶた間の接触面圧の振幅が大きい領域で発生します(図2)。このことを踏まえ、車軸軸受のフレッチング摩耗の抑制手法を二つ考案しました(図3)。
(手法1) | 内輪と後ぶた間の接触面圧の振幅を小さくするため、後ぶたのオイルシールしゅう動面に円周方向の溝を設けて後ぶたの剛性を低下させることにより、内輪と後ぶた間の接触面圧を低減させて半径方向にできるだけ均一な圧力分布が得られる形状にします。 | (手法2) | 後ぶたの内輪との接触面を、耐摩耗性に優れ、後ぶたの変形に追従できるセグメント構造化したDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜で被覆します。 |
考案した摩耗対策後ぶたを用いた車軸軸受の台上回転試験を実施した結果、内輪と後ぶたの接触部に近いころ大端部に付着したグリース中の鉄分が現用品より約90%低下することを確認しました(図4)。この結果を踏まえ、実車に搭載可能な対策品の仕様・設計を検討しています。
参考文献
- 岡村吉晃、深貝晋也、鈴木大輔、高橋研、梅原大樹、永友貴史:鉄道車両用車軸軸受のフレッチングに及ぼす接触面圧の影響,日本機械学会論文集,Vol.82,No.834,p.15‒00523,2016 (※)
- 岡村吉晃、鈴木大輔、深貝晋也、高橋研、永友貴史:鉄道車両用車軸軸受の内輪と後ぶたの接触部におけるフレッチング摩耗低減に関する検討,日本機械学会論文集,Vol.84,No.859,p.17‒00324,2018 (※)
- Okamura, Y., Suzuki, D., Ikoma, K., Nagatomo, T. and Utsunomiya, H., “Effects of segment‐structured DLC film on the fretting wear of railway axle journal bearings”, Mechanical Engineering Journal, Vol.6, No.1, p.18‒00446, 2019 (※)
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