新幹線電車の車軸軸受用オイルシール

1.はじめに

新幹線電車の車軸軸受には潤滑剤として油が使われているものがあり、油が漏れないよう密封させるためにゴム製のオイルシールが軸箱の後ぶたに取り付けられています。オイルシールのリップ部は回転する車軸に取り付けられた油きりとしゅう動しながら油を密封しています。

新幹線電車が現在以上の高速域で走行する場合でも密封性能を保持できる車軸軸受用オイルシール(以下、高速対応品)を開発しました。

2.特徴

図1に高速対応品の外観とその断面図を示します。高速対応品では耐久性を向上させるために、フッ素ゴムを採用し、さらに充てん剤を変更しました。さらに、リップの姿勢変化を抑制するため、リップ部の寸法や形状を変更して剛性を高めました。

オイルシール密封性能試験装置を用いて、高速対応品の性能評価試験を行った結果、400km/h相当の回転速度で車両走行距離にして75万km相当の回転をさせても、リップ部において油のにじみがなく密封性が保たれていることが確認され、試験後のリップ接触面も良好な状態でした。また、現行新幹線の速度域においても、より高い密封性能が期待できます。

参考文献

  1. 曽根康友:高速に対応する潤滑油とオイルシール、RRR、Vol.69、No.9、pp.24-27、2012.09
  2. 中村和夫、細谷哲也、日比野澄子、半坂征則、間々田祥吾、吉田博文:新幹線高速化のための車軸軸受用オイルシールの開発、鉄道総研報告、第22巻、第4号、pp.5-10、2008.04