横風の数値シミュレーション

1.自然風を模擬した流れの数値シミュレーション

築堤や車両に接近する自然風を模擬できる流体解析プログラムの開発を行っています。乱流境界層が流入する築堤上の流れの数値シミュレーションを行い、風洞試験で測定された流れ場をほぼ再現できることを確認しました(動画1)。

動画1 乱流境界層中の築堤上の流れのシミュレーション
<風速ベクトルの動画(赤:高速、青:低速)>

※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。

また、内製の流体解析プログラムだけでなく、商用ソフトウェアを用いた流体解析も実施しています。乱流境界層および一様流が流入する築堤上の流れの数値シミュレーションを行い、気流性状が築堤周りの流れ場に及ぼす影響を明らかにしました(図1、図2)。

2.横風を受ける走行車両周りの流れの数値シミュレーション

形状を単純化した走行車両周りの流れの数値シミュレーションを行い、走行車両模型で測定された車体表面圧力分布の再現を確認しました。さらに、車両に生じる空気力に対し、走行の有無が及ぼす影響を検討しました。また、走行車両が無風地帯から強風地帯に突入するという過渡的状況の流れの数値シミュレーションを行い、走行車両模型で測定された車体表面圧力分布の時系列波形を概ね再現できることを確認しました(動画2)。

動画2 横風を受ける走行車両周りの流れのシミュレーション
<圧力分布の動画(赤:高圧、青:低圧)>

※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。

3.横風空力特性を調べる風洞試験を再現する流れの数値シミュレーション

大型低騒音風洞での横風風洞試験を再現する数値シミュレーション手法を開発し、試験で用いる車両模型形状を対象とした流れの数値シミュレーションを行っています(図3、図4)。風洞試験を補完するシミュレーションを実施することで風洞試験の効率化を進めています。また、風洞試験では得がたい情報をシミュレーションにより取得することで、研究開発の深度化を図っています。将来的には、風洞試験で模擬することが難しい現象に対し、知見を得るためのツールとしての利用も期待されます。

4.防風柵の効果を調べる風洞試験を再現する流れの数値シミュレーション

防風柵の効果を調べるための風洞試験を補完することを目的に、防風柵模型を設置した横風風洞試験を対象とした流れの数値シミュレーションを行っています(図5、図6)。数値シミュレーションでは、防風柵模型の形状を忠実に再現することは計算コストの観点で現実的ではないため、防風柵を多孔質媒体としてモデリングすることで防風柵の効果を模擬しました。数値シミュレーションで得られた結果から、風洞試験の傾向を再現可能であることが確認されています。

参考文献

  1. 野口雄平、中出孝次:横風空力特性に関する風洞試験を模擬した数値シミュレーション、鉄道総研報告、第31巻、第9号、pp.11-16、2017.09
  2. 中出孝次:平地上の乱流境界層を走行する鉄道車両周りの流れの数値シミュレーション、鉄道総研報告、第28巻、第3号、pp.41-46、2014.03
  3. 中出孝次、鈴木昌弘:横風を受ける盛土上の流れの数値シミュレーション、鉄道総研報告、第24巻、第9号、pp.51-56、2010.09
  4. 中出孝次、鈴木昌弘:急激に増速する横風を受ける鉄道車両周りの流れの数値シミュレーション、日本機械学会第16回鉄道技術連合シンポジウム講演論文集、pp.637-638、2009
  5. Yuhei Noguchi, Minoru Suzuki, Chris Baker, Koji Nakade: Numerical and experimental study on the aerodynamic force coefficients of railway vehicles on an embankment in crosswind, Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics, Volume 184, pp.90-105, 2019