狭あい箇所に設置可能な制震機能を有する落橋防止装置

 2016年の熊本地震での道路橋りょうにおいて、上下端がピン支持されている鋼製橋脚を有する橋りょうが被災したことを踏まえ、同様の構造を有する鉄道橋りょうの落橋防止や桁の変位抑制が求められています(図1)。このような橋りょうは幹線道路や鉄道を跨ぐ箇所に多く建設され、桁下空頭の制限や桁支承部の狭あいさなどの理由で既存の対策工法では落橋防止と桁の変位抑制を同時に満足できない場合があります。そこで、桁下を支障せず、狭い箇所に施工可能で、桁の変位抑制と落橋防止を同時に実現可能な装置として、直径50~100mmの複数の鋼棒を鋼板で一体化させ、ボルトで桁に取付ける装置を開発しました1)(図2)。
 本装置の大きさは線路直角方向1.0m、線路方向0.4m、高さ0.4m程度で、狭い可動支承部にも施工可能となっています。本装置は、鋼棒が塑性変形する際に、桁の振動エネルギーを吸収する制震機能を持っており、地震時の桁の揺れを抑えることができます(図3(a))。さらに、万が一、桁に過大な変位が生じた場合においても、鋼棒に十分な強度を持たせておくことで、桁の自重を支持し、落橋を防止することができます(図3(b))。本装置は、実橋りょうにおいて実用化され、地震対策の一工法として有効活用されています2)

参考文献

  1. 土井達也、豊岡亮洋、斉藤雅充、和田一範、名波健吾、福本守:狭隘な箇所に設置可能な落橋防止機能兼用型制震装置の開発、土木学会論文集、Vol.79、No.13、22-13003、2023.(※)
  2. 和田一範、名波健吾、土井達也、豊岡亮洋、福本守:制震装置で鋼鉄道橋を地震から守る、RRR、Vol.81、No.6、pp.28-33、2024.

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