長大橋りょうを対象とした地震被害の即時推定
地震発生後には全ての鉄道構造物の被害状況を把握したうえで運転再開を判断する必要があります。これまでに、鉄道総研では地震後の運転再開支援を目的として、一般的な橋りょう・高架橋を対象とした地震被害を即時に推定するノモグラムを開発してきましたが、長大橋りょうのように挙動が複雑な構造物には適用できませんでした。
そこで、長大橋りょうにも適用可能な地震被害の即時推定手法1),2)を開発しました。開発手法(図1)では、長大橋りょうの複雑な挙動を複数の揺れ方(振動モード)に分解し、振動モードごとの揺れの大きさ(応答値)を推定して足し合わせます。各振動モードの応答値は過去に開発した被害推定ノモグラムを用いて推定できるため、短時間での被害推定を可能としました。
図2に示す橋長790mの斜張橋を対象とした場合、詳細な解析では被害推定結果を得るために数十時間を要しますが、開発手法では地震発生後の数分間で、詳細解析を包絡する安全側の結果が得られます(図3)。開発手法により、長大橋りょうが含まれる鉄道路線においても即時に安全側の地震被害推定が可能となり、地震後の運転再開可否の判断に活用できます。
本研究は、本州四国連絡高速道路株式会社との共同研究により実施しました
参考文献
- 月岡桂吾,坂井公俊,豊岡亮洋,金田崇男,西谷雅弘:複雑な形状の鉄道橋りょうの被害を地震後即時に推定する,RRR, Vol. 79, No. 5, pp. 44-49, 2022.
- 月岡桂吾,坂井公俊,金田崇男,西谷雅弘,笹岡良治,菊地佳誉:モード解析法を用いた長大橋りょうの地震後即時被害推定,第42回地震工学研究発表会,2022.