磁気冷凍システム
1.磁気冷凍の特徴
磁気冷凍とは、ある種の磁性体に磁場変化を与えた場合に、磁性体内部でエントロピー変化が生じる「磁気熱量効果」を利用した新しい冷凍方式です。
磁気冷凍サイクルは、フロン類を用いる蒸気圧縮式サイクルと比較して次のような特徴を持っています。
・オゾン層破壊や温暖化に関わる物質を用いないため、環境にやさしい。
・可燃性のイソブタンや高圧のCO2などを用いず、安全である。
・エントロピー密度が高いため、高効率化が可能であるとともに装置がコンパクトにできる。
・コンプレッサーを用いないため、振動、騒音が少ない。
2.kW級磁気冷凍システム
kW級の冷凍能力を実証するため、鉄道総研で開発した円環状ハルバッハ配列永久磁石を組み込み、磁性体としてガドリニウム合金を搭載した磁気冷凍システムを開発しました(図1)。室温における冷凍能力試験では、当初の目標(1kW)を超える1.4kWを達成しました(図2)。
今回の成果により、磁気熱量効果を用いた磁気冷凍システム技術の、大型冷凍・冷房装置への適用可能性を示しました。その他、水素液化などの極低温領域での応用も考えられます。
本研究の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の省エネルギー革新技術開発事業の委託を受けて実施しました。
図1 開発した磁気冷凍システム
図2 開発した磁気冷凍システムの冷凍能力
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参考文献
- Koichiro Waki, Taiki Onji, Keigo Ukita, Yasuaki Sakamoto, Masaru Tomita, Naoki Hirano, Yuta Onodera, "Repetitive excitation and demagnetization for magnetic refrigeration using static superconducting coils with trapezoidal wave current generated by resonance and switch operation," Cryogenics, Vol. 149, 104108, 2025(※)
- 宮崎 佳樹, 池田 和也, 長谷川 均, 平野 直樹, 野口 芳直, 岡村 哲至, 裵 相哲, 川南 剛:1 kW 級室温磁気ヒートポンプの開発、低温工学、Vol. 50、No.2、pp. 80-87 (2015)(※)
- 宮崎佳樹,脇耕一郎,水野克俊,池田和也:車両空調向け磁気ヒートポンプシステムの冷凍能力向上、鉄道総研報告、 Vol.28、No.9、pp.35-40、2014.9
- 宮崎佳樹:磁気を利用して空気を冷やす、RRR、Vol.70、No.10、pp.16-19、2013.10
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