付随車向け電力回生・非接触ディスクブレーキ
1.概要
近年、列車運行の脱炭素化やエネルギー効率の高い車両の開発が期待されるとともに、消耗品の削減やメンテナンスの省人化も求められています。付随車の軸ディスクブレーキを電気ブレーキへ置き換えることにより、エネルギー消費と消耗品を削減することが考えられますが、付随車に電動機やインバーター、歯車装置などの搭載が必要になり、導入コストなどに課題があります。
そこで、インバーターなどを用いないシンプルな回路構成により、付随車で簡易的な電気ブレーキを実現可能とする非接触ディスクブレーキ(図1)を提案しました。 この電気ブレーキでは、電磁石とコンデンサの共振現象によって電気を流すことでブレーキ力と回生電力を得ます。
2.インバータレス回生ブレーキの原理検証
鉄道のブレーキにおいて、インバーターを用いずに電磁石とコンデンサの共振現象によってブレーキと電力回生を行った前例はありません。そこで、原理検証試験を行いました。その結果、実際にブレーキ力を発生しながら、回生電力を得られることが実証されました(図2、図3) 。インバーターレス回生ブレーキを実現可能であることを示しました。
3.設計検討
実機を設計する際に必要となる基礎的なデータを取得するため、実機大の要素試験機(図4)を試作し、ディスク温度とブレーキ力の関係などの基礎データを取得しました。停止距離への影響が大きい高速域では、ブレーキトルクへのディスク温度の影響は小さいことなどが分かりました。また、ブレーキ動作状態に応じて複雑に変化する電気的な特性に対して、所望の共振状態に設定するためのコンデンサ容量の決定方法などを考案しました。これらの試験や解析を通じて、設計検討を進めています。
図1 付随車向け電力回生・非接触ディスクブレーキの構成
(直流回路に回生する場合)
図2 共振通電の原理検証(起動波形)
図3 共振通電の原理検証(ブレーキと回生)
図4 要素試験機
関連ページ
参考文献
- 浮田啓悟,坂本泰明,嵯峨信一:付随車回生制動の実現によりさらなる環境性能向上を目指す非接触電磁ディスクブレーキ,RRR, Vol. 82, No. 2, pp. 46-51, 2025
- 浮田啓悟,坂本泰明,佐藤光秀,水野勉:自己励磁形レールブレーキのギャップ変化の諸影響を考慮したコンデンサ容量の選定方法,電気学会論文誌D, Vol. 144, No. 9, pp. 654-661, 2024(※)
- Keigo Ukita, Yasuaki Sakamoto, Mitsuhide Sato and Tsutomu Mizuno, “Characteristics of Self-Excited Rail Brake Using Capacitors, ” IEEJ TRANSACTIONS ON ELECTRICAL AND ELECTRONIC ENGINEERING, Vol. 18, No. 3, pp. 463–469, 2023(※)
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