28. 自然風と走行風の合成風を再現した車両作用力の風洞試験

強風時の走行安全性の検討に必要な空気力の評価は主に風洞試験で行われており、線路構造物上に静止した車両の模型を使用し、車体や線路構造物の形状の影響、風向角の特性などが調べられています。 しかしながら、走行する車両の空気力評価には、自然風と車両走行により誘起される風との合成風に対する影響の評価という重要な課題が残されていました。

そこで、静止車両模型による風洞試験法の妥当性の確認を目的に、走行する車両まわりの流れを風洞で再現する走行装置を用いて、自然風中を走行する車両に働く空気力を車上搭載型システムで評価する風洞試験法を開発しました(図1)。

風洞試験は、車両模型の走行速度、風洞風速や風洞吹出口に対する走行装置の設置角度等の条件を変化させて行い、車体表面に適切に配置した圧力孔で測定された圧力分布から、車両に働く空気力の中で車両の転覆に最も大きな影響を持つ横力(曲線走行の限界状態で約70%寄与する)を評価しました。模型の縮尺は1/60、車体は通勤型車両形状、線路構造物は平地と築堤(図2)です。

取得した平均圧力係数を風向角ごとに整理した結果、通勤型車両模型が平地および築堤上を走行する際の、圧力係数から推定した横力係数における走行時の影響(静止時との差)は最大0.04(9%)程度と小さいことから(図3)、静止車両模型を用いた風洞試験のみによって風転覆耐力を評価してもよいことがわかりました。