主要な研究開発成果(2017年度)

本誌は、公益財団法人 鉄道総合技術研究所における2017年度の主要な研究開発成果をまとめたものです。
本成果は、JR各社をはじめ、研究機関、大学、企業などの関係機関のご協力によって得られたものであり、厚く御礼申し上げます。

Ⅰ.安全性の向上

1. 自動修正機能を付加した鉄道地震被害予測シミュレータ

  • 地震時の構造物、電化柱、車両の挙動を即時的に予測するシミュレータを開発しました。
  • 実際の揺れや被害状況に応じた解析パラメータの自動修正機能を付加しました。
  • 優先点検箇所の選定などにより地震発生に伴う復旧時間を短縮できます。

  • 地震時の構造物、電化柱、車両の挙動を即時的に予測するシミュレータを開発しました。
  • 実際の揺れや被害状況に応じた解析パラメータの自動修正機能を付加しました。
  • 優先点検箇所の選定などにより地震発生に伴う復旧時間を短縮できます。

2. 海底地震計情報を利用した早期地震警報手法の実用化

  • 海底地震計データを用いた早期地震警報手法を開発し、実データを用いて規定値 や誤警報防止手法の有効性を検証しました。
  • 海溝型地震では従来より10秒以上早く警報を出すことができると想定されます。

  • 海底地震計データを用いた早期地震警報手法を開発し、実データを用いて規定値 や誤警報防止手法の有効性を検証しました。
  • 海溝型地震では従来より10秒以上早く警報を出すことができると想定されます。

3. 地震時の橋台背面盛土沈下および軌道座屈対策工法

  • 地震時の橋台背面盛土沈下に伴うバラスト軌道の座屈メカニズムを解明しました。
  • 柱列状地盤改良体一体型バラスト止め壁による座屈対策工を提案しました。

  • 地震時の橋台背面盛土沈下に伴うバラスト軌道の座屈メカニズムを解明しました。
  • 柱列状地盤改良体一体型バラスト止め壁による座屈対策工を提案しました。

4. 大地震に対する表層地盤の応答評価手法

  • 地盤の動的解析のための土の変形特性試験法を開発しました。
  • 特殊土を含む地盤のためのハイブリッド地盤応答試験装置を開発しました。
  • 大地震に対する構造物の耐震設計や地盤の液状化判定に活用できます。

  • 地盤の動的解析のための土の変形特性試験法を開発しました。
  • 特殊土を含む地盤のためのハイブリッド地盤応答試験装置を開発しました。
  • 大地震に対する構造物の耐震設計や地盤の液状化判定に活用できます。

5. 吊り長さの短い駅舎天井の耐震改修工法

  • 吊り長さの短い天井に対する角パイプを用いた耐震改修工法を開発しました。
  • 構造実験により耐震性能の高いことを明らかにしました。
  • 従来工法に比べてコストが半分以下に低減できることを確認しました。

  • 吊り長さの短い天井に対する角パイプを用いた耐震改修工法を開発しました。
  • 構造実験により耐震性能の高いことを明らかにしました。
  • 従来工法に比べてコストが半分以下に低減できることを確認しました。

6. 突風等による強風箇所の推定アルゴリズム

  • 突風等の強風箇所を気象レーダーにより推定するアルゴリズムを作成しました。
  • 10分先までの強風箇所を5分間隔で予測可能です。

  • 突風等の強風箇所を気象レーダーにより推定するアルゴリズムを作成しました。
  • 10分先までの強風箇所を5分間隔で予測可能です。

7. 洗掘被災橋りょうの再使用可否判定フロー

  • 洗掘で被災した橋りょうの再使用可否判定フローを提案しました。
  • 列車運休期間を短縮し、鉄道のレジリエンス向上に貢献します。

  • 洗掘で被災した橋りょうの再使用可否判定フローを提案しました。
  • 列車運休期間を短縮し、鉄道のレジリエンス向上に貢献します。

8. 台車蛇行動に対する安定性評価精度の向上

  • 台車蛇行動が、走行速度に加えて輪軸の左右変位に依存して発生することを明ら かにしました。
  • 試験方法によるばらつきのない、走行安定性評価が可能になります。

  • 台車蛇行動が、走行速度に加えて輪軸の左右変位に依存して発生することを明ら かにしました。
  • 試験方法によるばらつきのない、走行安定性評価が可能になります。

9. 画像処理を用いた運転士の視認支援手法

  • 車両運転台の部材が死角となって見えない車両外部の映像を、運転士の視点に対応 した自然な見え方でモニタ等に表示する視点変換手法を開発しました。
  • 運転士の負担軽減に寄与する視認支援装置として活用できます。

  • 車両運転台の部材が死角となって見えない車両外部の映像を、運転士の視点に対応 した自然な見え方でモニタ等に表示する視点変換手法を開発しました。
  • 運転士の負担軽減に寄与する視認支援装置として活用できます。

10. 長距離型Uドップラーによる長大構造物の健全度判定

  • 不可視光レーザドップラー振動計により、300m遠方から構造物の健全度を判定できます。
  • レーザ光の自動制御スキャンで最も精度が高くなる点を対象表面から検出します。
  • 2台同期計測で、連続する高架橋の固有振動数を遠隔位置から一括測定できます。

  • 不可視光レーザドップラー振動計により、300m遠方から構造物の健全度を判定できます。
  • レーザ光の自動制御スキャンで最も精度が高くなる点を対象表面から検出します。
  • 2台同期計測で、連続する高架橋の固有振動数を遠隔位置から一括測定できます。

11. 小歯車軸受の焼付き発生における組合せすきまの影響

  • 小歯車部の温度変化による軸受の組合せすきま(エンドプレイ値)の変化を明ら かにしました。
  • 小歯車軸受の焼付き防止には、回転中にエンドプレイ値が 0mm 近くまで減少 しない組立方法や、調整不要な構造が有効です。

  • 小歯車部の温度変化による軸受の組合せすきま(エンドプレイ値)の変化を明ら かにしました。
  • 小歯車軸受の焼付き防止には、回転中にエンドプレイ値が 0mm 近くまで減少 しない組立方法や、調整不要な構造が有効です。

Ⅱ.低コスト化

12. 被災盛土の早期・強化復旧技術の開発

  • 被災盛土の早期強化復旧に有効なかご枠と地山補強材・排水パイプを併用した方 法を開発し、設計・施工の手引きを整備しました。
  • 提案復旧法は耐降雨性を1.7倍、耐震性を1.5倍以上向上します。
  • 提案復旧法は本復旧に要する期間を3割程度削減することができます。

  • 被災盛土の早期強化復旧に有効なかご枠と地山補強材・排水パイプを併用した方 法を開発し、設計・施工の手引きを整備しました。
  • 提案復旧法は耐降雨性を1.7倍、耐震性を1.5倍以上向上します。
  • 提案復旧法は本復旧に要する期間を3割程度削減することができます。

13. 地山改良型ロックボルトによるトンネルの補強工法

  • 緩んだ地山でも優れた効果が期待できる地山改良型ロックボルトを開発しました。
  • 試験施工により施工性や長期的な軸力保持性能を確認しました。
  • 従来型ロックボルトに対し、工費を約40%削減できます。

  • 緩んだ地山でも優れた効果が期待できる地山改良型ロックボルトを開発しました。
  • 試験施工により施工性や長期的な軸力保持性能を確認しました。
  • 従来型ロックボルトに対し、工費を約40%削減できます。

14. 速度300km/h超に対応した高速シンプル架線

  • 300km/h超の運転速度に対応した、部品点数が少なく保守性に優れた高速シン プル架線を開発しました。
  • 営業線に架設し、離線率やトロリ線押上量は目安値以内で集電性能に問題がない ことを確認しました。

  • 300km/h超の運転速度に対応した、部品点数が少なく保守性に優れた高速シン プル架線を開発しました。
  • 営業線に架設し、離線率やトロリ線押上量は目安値以内で集電性能に問題がない ことを確認しました。

15. 経済的な中期軌道保守計画の策定システム

  • 5年程度の軌道変位保守と道床交換の計画を策定するシステムを開発しました。
  • 中期的に維持したいレベルの軌道状態を少ない保守コストで実現する軌道変位保守 と道床交換の計画を作成できるシステムです。

  • 5年程度の軌道変位保守と道床交換の計画を策定するシステムを開発しました。
  • 中期的に維持したいレベルの軌道状態を少ない保守コストで実現する軌道変位保守 と道床交換の計画を作成できるシステムです。

16. 施工時間を短縮したレール頭部きず補修工法

  • レール頭部きず補修工法の自動制御式レール熱間矯正機を開発しました。
  • 本装置により作業時間を従来の2/3の3時間以内とすることが可能となりました。
  • 本工法の普及のため、「施工の手引き」を編纂しました。

  • レール頭部きず補修工法の自動制御式レール熱間矯正機を開発しました。
  • 本装置により作業時間を従来の2/3の3時間以内とすることが可能となりました。
  • 本工法の普及のため、「施工の手引き」を編纂しました。

17. 地域鉄道向け無線式列車制御システム

  • 駅構内での無線通信により軌道回路や地上信号機を不要とした地域鉄道向けの列車 制御システムを開発しました。
  • データベース搭載の車上装置により、次駅までの列車防護を実施します。
  • 汎用無線LANを使用するため、車上-地上間の通信用にIP電話を使用できます。

  • 駅構内での無線通信により軌道回路や地上信号機を不要とした地域鉄道向けの列車 制御システムを開発しました。
  • データベース搭載の車上装置により、次駅までの列車防護を実施します。
  • 汎用無線LANを使用するため、車上-地上間の通信用にIP電話を使用できます。

18. 水素イオン型ジオポリマーによるコンクリート劣化抑制

  • 優れたコンクリート劣化抑制効果を持つ水素イオン型ジオポリマーの合成方法を 開発しました。
  • リチウムを用いた従来品と同等の劣化抑制効果が1/5の材料コストで得られます。

  • 優れたコンクリート劣化抑制効果を持つ水素イオン型ジオポリマーの合成方法を 開発しました。
  • リチウムを用いた従来品と同等の劣化抑制効果が1/5の材料コストで得られます。

Ⅲ.環境との調和

19. 可変リアクトルによる直流き電電圧制御手法

  • 回生電力の有効活用を実現する直流き電電圧の制御技術を開発しました。
  • 定格に対し最大25%程度の電圧制御が可能で、コストは既存技術の1/5です。

  • 回生電力の有効活用を実現する直流き電電圧の制御技術を開発しました。
  • 定格に対し最大25%程度の電圧制御が可能で、コストは既存技術の1/5です。

20. 沿線の構造物による音の反射を加味した騒音予測手法

  • 切取法面、跨線橋、建物等による音の反射・遮蔽の影響を含めた騒音予測手法を 構築しました。
  • 鉄道沿線に跨線橋や建物が新設された場合等、より複雑な条件における、騒音低 減策の検討に活用できます。

  • 切取法面、跨線橋、建物等による音の反射・遮蔽の影響を含めた騒音予測手法を 構築しました。
  • 鉄道沿線に跨線橋や建物が新設された場合等、より複雑な条件における、騒音低 減策の検討に活用できます。

Ⅳ.利便性の向上

21. 横圧低減と走行安定性を両立するボギー角操舵システム

  • 曲線通過時の台車旋回モーメントを約77%、平均横圧を約56%低減できるボギー 角操舵システムを開発しました。
  • 高いフェイルセーフ性を備え、既存車両にも取り付け可能です。

  • 曲線通過時の台車旋回モーメントを約77%、平均横圧を約56%低減できるボギー 角操舵システムを開発しました。
  • 高いフェイルセーフ性を備え、既存車両にも取り付け可能です。

22. トンネル微気圧波低減のための緩衝工の断面積拡大方法

  • 微気圧波低減に効果的なトンネル本坑と緩衝工の断面積比を提案しました。
  • 長さ40m 未満の緩衝工では本坑との断面積比を2.5とすることで、側面開口部が全閉でも効果が増大し、長さ40m以上の緩衝工では、断面積比を段階的に拡大させることが効果的であることが明らかとなりました。

  • 微気圧波低減に効果的なトンネル本坑と緩衝工の断面積比を提案しました。
  • 長さ40m 未満の緩衝工では本坑との断面積比を2.5とすることで、側面開口部が全閉でも効果が増大し、長さ40m以上の緩衝工では、断面積比を段階的に拡大させることが効果的であることが明らかとなりました。

23. 無線式列車制御の設計に用いる通信・運行シミュレータ

  • 列車運行を含む無線式列車制御の安定性を評価するシミュレータを開発しました。
  • 要求される伝送品質と列車遅延回復力を同時に満たし、かつ、最も低コストの無線 通信ネットワーク設計が可能となりました。

  • 列車運行を含む無線式列車制御の安定性を評価するシミュレータを開発しました。
  • 要求される伝送品質と列車遅延回復力を同時に満たし、かつ、最も低コストの無線 通信ネットワーク設計が可能となりました。

24. 需要波動予測に基づいた新幹線輸送に関する意思決定の支援手法

  • 新幹線の旅客輸送実績データと、暦配列や沿線のイベント情報を基に、30分単位の 旅客需要を日別に予測する手法を開発しました。
  • 開発した新幹線の輸送計画策定支援システムにより、需要波動の予測結果に基づく、 日別の予定臨時列車の設定判断の支援が可能となります。

  • 新幹線の旅客輸送実績データと、暦配列や沿線のイベント情報を基に、30分単位の 旅客需要を日別に予測する手法を開発しました。
  • 開発した新幹線の輸送計画策定支援システムにより、需要波動の予測結果に基づく、 日別の予定臨時列車の設定判断の支援が可能となります。

Ⅴ.基礎研究

25. ブレーキディスク動的変形量の測定法

  • これまで測定が困難であった高速回転時に高温となるブレーキディスク摩擦面の 動的変形量の測定法を提案しました。
  • ディスクやパッドの動的変形量を把握することにより、形状・機構の設計検証に 活用できます。

  • これまで測定が困難であった高速回転時に高温となるブレーキディスク摩擦面の 動的変形量の測定法を提案しました。
  • ディスクやパッドの動的変形量を把握することにより、形状・機構の設計検証に 活用できます。

26. 集電系の模擬走行試験を可能とする HILS システム

  • 定置でパンタグラフと架線の相互作用を考慮した模擬走行試験を可能とする集電 系HILSシステムを開発しました。
  • 300km/h走行時の支持点間隔やハンガ間隔に起因する約20Hzまでの架線振動 を再現可能であることを確認しました。
  • パンタグラフ開発の時間短縮が可能です。

  • 定置でパンタグラフと架線の相互作用を考慮した模擬走行試験を可能とする集電 系HILSシステムを開発しました。
  • 300km/h走行時の支持点間隔やハンガ間隔に起因する約20Hzまでの架線振動 を再現可能であることを確認しました。
  • パンタグラフ開発の時間短縮が可能です。

27. 数値シミュレーションによる車両床下の蛇行流れの再現

  • 台車を含む車両周りの流体解析により床下の蛇行流れを再現しました。
  • 流体計算と風洞実験を比較したところ、左右流速変動のパワースペクトルの傾向 がほぼ一致しました。
  • トンネル内車両動揺の低減策の検討に活用できます。

  • 台車を含む車両周りの流体解析により床下の蛇行流れを再現しました。
  • 流体計算と風洞実験を比較したところ、左右流速変動のパワースペクトルの傾向 がほぼ一致しました。
  • トンネル内車両動揺の低減策の検討に活用できます。

28. 自然風と走行風の合成風を再現した車両作用力の風洞試験

  • 自然風と車両走行により誘起される風との合成風に対する影響を評価するため、 走行する車両に働く空気力を評価する風洞試験法を開発しました。
  • 平地および築堤上では、横力係数に対する走行の影響は小さく、静止車両模型で 風転覆耐力を評価できることがわかりました。

  • 自然風と車両走行により誘起される風との合成風に対する影響を評価するため、 走行する車両に働く空気力を評価する風洞試験法を開発しました。
  • 平地および築堤上では、横力係数に対する走行の影響は小さく、静止車両模型で 風転覆耐力を評価できることがわかりました。

29. 台車部空力音の詳細な発生部位を特定する風洞試験

  • 「音響透過板」によって、台車部から発生する空力音源を特定する測定手法を開発 しました。
  • 主電動機や歯車装置部が主たる空力音源であることを特定しました。
  • 台車装置の低騒音化対策を効率的に進められるようになります。

  • 「音響透過板」によって、台車部から発生する空力音源を特定する測定手法を開発 しました。
  • 主電動機や歯車装置部が主たる空力音源であることを特定しました。
  • 台車装置の低騒音化対策を効率的に進められるようになります。

30. 生理指標による運転士の状態推定

  • 高性能多点脳波計等の各種生理指標の同時測定を実施し、運転作業時の生理変化が 客観的に把握できるようになりました。
  • 複数の生理指標を組み合わせることで、集中状態や心理的動揺を推定できることを 確認しました。

  • 高性能多点脳波計等の各種生理指標の同時測定を実施し、運転作業時の生理変化が 客観的に把握できるようになりました。
  • 複数の生理指標を組み合わせることで、集中状態や心理的動揺を推定できることを 確認しました。

31. トロリ線への追従性が良好な新幹線パンタグラフ用多分割舟体

  • 低騒音かつトロリ線への高い追従性を両立する多分割舟体を提案しました。
  • 多分割舟体試作機は、たわみ板方式の舟体に対しハンガ周期の追従性が約10倍、 離線率が約1/2となることを確認しました。

  • 低騒音かつトロリ線への高い追従性を両立する多分割舟体を提案しました。
  • 多分割舟体試作機は、たわみ板方式の舟体に対しハンガ周期の追従性が約10倍、 離線率が約1/2となることを確認しました。

・ Ⅰ.1、Ⅰ.7、Ⅰ.10、Ⅱ.13 の各件名は、国土交通省の補助金を受けて実施しました。
・ Ⅰ.2 の件名は、国立研究開発法人防災科学技術研究所との共同研究により実施しました。
・ Ⅰ.3 の件名は、国立大学法人横浜国立大学との共同研究により実施しました。
・ Ⅰ.6 の件名は、国立大学法人高知大学との共同研究により実施しました。
・ Ⅱ.12 の件名は、ライト工業株式会社、岡三リビック株式会社、小岩金網株式会社との共同研究により実施しました。
・ Ⅴ.26 の件名は、ブリストル大学との共同研究により実施しました。
・ Ⅴ.30 の件名は、学校法人慶應義塾との共同研究により実施しました。

主要な研究開発成果