12. 列車前方画像を用いた木まくらぎの劣化度判定システム

 木まくらぎ構造を主体とする線区では、木まくらぎの腐朽によってレールを十分に締結できなくなり、軌間内脱線が発生する可能性があります。
 このため、曲線を中心に木まくらぎの連続不良本数管理や個別状態管理が行われていますが、膨大な本数のまくらぎの目視検査に多大な労力を要しています。
 そこで、市販のビデオカメラで撮影した列車前方画像を射影変換した疑似的な床下画像に、画像処理とディープラーニングによる機械学習を適用して木まくらぎの検出と劣化度判定を自動で行うシステムを開発しました(図1)。
 本システムは任意の列車へのカメラ設置等の準備時間が10分以内と短く、かつ、現在JR各社等で導入されている床下画像撮影装置に比べて低コストです。

 営業線の車上から撮影した約16,000本の木まくらぎの画像に対して本システムを適用した結果、まくらぎの検出率は99.5%(バラスト等でまくらぎ表面が顕著に覆われている条件を除くと100%)であることを確認しました。
 また、保線技術者が画像から判定した劣化度(4段階)と本システムが判定した劣化度を比較した結果、90%以上の精度で自動判定できることを確認しました(表1)。
 このとき、不良なまくらぎ(A2、B)を良好なまくらぎ(C、D)と誤判定した割合は7%ですが、軌間内脱線のリスクが高くなる連続不良箇所を見逃す可能性は十分低いと考えられます。
 本システムでは、結果を表示するビューアや表形式の検査記録簿において、まくらぎ 1 本毎に劣化度に応じた色による分類形式で出力されるため、木まくらぎの連続不良箇所を視覚的かつ容易に把握できます。