14. 車両モニタデータを活用したセンサ増設不要の自動異常検知

 近年、車両機器の動作状況を記録・集約するシステムが導入され、大量の車両モニタデータを蓄積できるようになりました。このデータを活用することで、センサーを新設することなく走行中の車両における車両機器の早期異常検知を可能にし、運行の信頼性を更に向上できる可能性があります。
 一方、車両機器の動作状態は複雑に変化するため、単純なしきい値超過などの判定条件では異常を検知することが困難な場合があります。

 そこで、ニューラルネットワークを用いた機械学習により車両モニタデータから車両機器の動作の特徴を抽出し、車両機器の異常の程度(異常度)を判定する手法を提案しました(図1)。
 ①まず、ニューラルネットワークにより車両機器が正常に動作している時の車両モニタデータを学習し、異常の影響を受けるような車両の状態を示す項目 A を他の項目から推定するモデルを作成します。
 ②次に、上記モデルと学習に使用しなかったデータを用いて、正常時における項目Aの推定値と実測値の差(推定誤差)の頻度分布(推定誤差分布)を得ます。
 ③最後に、実際の走行時のデータに対する項目Aの推定誤差と先述の正常時の推定誤差分布に基づいて、推定誤差の発生確率が低いほど高い値となるように定義した異常度を各時刻について算出します。

 提案手法を営業車両で取得された車両モニタデータに適用し、エンジンの過熱や空調装置の性能低下等の実際に発生した異常を、異常度の上昇により早期に検知できることを確認しました。
 図2のように、本手法を状態監視システムに適用することで、乗務員や指令員が車両機器の異常発生を早期に把握できます。これにより、重大な故障に至る前に修繕を行う等の対処が可能になります。