13. 汎用通信技術を用いた無線式列車制御システムの構築手法

 無線式列車制御システムの導入が進んでおり、効率的な列車運行と地上設備の削減に寄与しています。今後、5Gなどの汎用通信技術を活用することで、鉄道事業者の自営設備をさらに削減し、設計や保守に関わる業務を大幅に軽減することが期待されます。
 しかし、従来のシステムでは、情報伝送に制約がある自営の無線設備を前提とした機能で安全性が担保されており、汎用通信技術を用いる際の安全性担保に必要な情報セキュリティ対策の具体的な実装手法がありませんでした。

 そこで、上記の課題を解決するために、基地局などの情報伝達機能と、地上・車上装置の安全に関わる保安制御機能を独立させるシステム構成を提案し、これに基づいて無線式列車制御システムを設計する手順を策定しました(図1)。
 また、第三者からの通信ネットワークに対する外部攻撃に対して、保安装置が満たすべき安全性と情報セキュリティの要件を定義しました。
 具体的な実装方法として、暗号技術に基づくセキュリティ対策機能を非フェールセーフモジュールに搭載し、電文ごとにテストデータを用いてその機能の正常動作を診断する手法を提案し(図2)、ワンボードマイコンを用いた試作モジュールにて機能確認を実施しました。
 これらの手法に基づいてシステムを設計することで、汎用通信技術の適用が容易になるほか、保安装置の更新時期とは独立して、最新の通信技術への置換えや機能向上ができます。システムの運用条件や構成にも依存しますが、自営の基地局等の無線設備が不要となり、地上設備の総数を最大で約50%程度削減することができます。

 なお、本成果は国土交通省が設置した「無線式列車制御システムに関する検討会」において今後の無線式列車制御システムの基本構成として採用され、公開されたガイドラインに反映されました。