可変減衰軸ダンパを用いた上下制振制御システム

軸ダンパの減衰制御システムは、主に車体の上下曲げ振動 (一般に、8~12Hz付近) を低減するためのシステムです。このシステム(図1)は、軸箱と台車枠の間に取り付けられている軸ダンパと呼ばれる油圧ダンパの発生力を制御して、輪軸から台車枠へ伝わる振動を低減させます。その結果、車体への主要な加振源となっている台車の振動が抑制されて車体の振動が低減されます。

可変減衰軸ダンパは、1個の制御弁でダンパの力を制御でき、かつ電源を切った状態では現用の軸ダンパとほぼ同等のダンパとして機能します。従って、システムに異常が発生した際には、ダンパの電源を切ることで現用の軸ダンパとほぼ同等の条件で走行できます。また、ダンパの取付寸法と最大発生力は現用の軸ダンパとほぼ同等であるため、軸ダンパ交換と加速度センサ・制御装置を車両に搭載することにより、車両側の大きな変更を伴うことなく既存車両に本システムを搭載できます。

開発したシステムを新幹線電車に搭載し速度315km/h一定で走行した際の、各周波数での車体の上下振動の強さを表す ”振動加速度パワースペクトル密度 (PSD)” を図3に示します。車体の曲げ振動によるピークが9Hz付近に見られますが、軸ダンパの制御によりこのピーク値を1/5程度に低減する振動抑制効果が得られました。このような試験を数種類の新幹線車両に対して行い、安定した振動低減効果が得られることを確認しました。また、実用化に向けた制御装置(図4)の各種試験、および耐久走行試験を行い、性能を確認しました。

※ 東日本旅客鉄道(株)殿の許可を得て、写真および図を掲載しています。

参考文献

  1. 菅原 能生, 中川 千鶴:新幹線車両の振動を制御する, RRR, Vol. 68, No. 3, pp. 6-9, 2011
  2. 菅原 能生, 小島 崇, 瀧上 唯夫, 山口 輝也:上下制振システムの振動低減効果に与える旅客乗車の影響, 鉄道総研報告, Vol. 25, No. 1, pp. 11-16, 2011
  3. 菅原 能生:可変減衰軸ダンパによる鉄道車両の上下制振システム, RRR, Vol. 67, No. 4, pp. 40-41, 2010
  4. 菅原 能生:車体の振動を台車から絶つ, RRR, Vol. 65, No. 6, pp. 14-17, 2008
  5. 菅原 能生, 風戸 昭人, 富岡 隆弘, 三平 満司:鉄道車両の1次ばね系の減衰制御による上下振動低減 (新幹線電車による高速走行試験結果), 日本機械学会論文集 (C編), Vol. 74, No. 741, pp. 1222-1230, 2008(※)
  6. 菅原 能生, 風戸 昭人, 小金井 玲子, 富岡 隆弘:軸ダンパと空気ばねの減衰制御を併用した車両の上下振動低減, 鉄道総研報告, Vol. 22, No. 2, pp. 17-22, 2008

(※)印のついたリンクは外部サイトへ移動します

その他の関連コンテンツ