燃料電池鉄道車両の開発(2001~2006年度)

1.はじめに

省エネ・環境負荷低減を目的とした車両技術の一つとして、水素を燃料として発電を行う燃料電池を、鉄道車両の電源に適用する研究を行っています。

2.燃料電池鉄道車両の開発について

  • 2001年度より燃料電池鉄道車両の開発を開始し、3つのフェーズに分けて研究開発を進めています。(表1)
  • 2005年度、鉄道車両の走行用電源を想定した燃料電池システム(図1)と、燃料となる水素を貯蔵し、システムへ供給する高圧水素タンクシステム(図2)を試作しました。

2006年度、燃料電池のみを鉄道車両の走行用電源に適用した走行試験を行い、鉄道車両1両を駆動することに成功しました。

3.100kW級固体高分子形燃料電池システムの試作

  • 燃料電池を鉄道車両の電源として利用するためには、始動性、負荷追従性などさまざまな要求があります。
  • 低温動作が可能な固体高分子形を採用し、高温部をなくして始動時間を90秒程度と短くしました。
  • 鉄道車両特有の変動負荷に対して、空気量を変化させて負荷に追従させています。

4.高圧水素タンクシステムの試作

  • 試作した高圧水素タンクシステムは、水素を350気圧で高圧圧縮し、総量約17.2kgを貯えることができます。(図2)
  • システム内には4本の高圧容器が搭載されており、燃料電池自動車用として実績のある「TYPEⅢ」と呼ばれる容器を使用しています。
  • 一段で10気圧に減圧して燃料電池へ供給し、燃料電池内部でさらに1気圧に減圧して使用します。

5.燃料電池試験電車

  • これらの機器を試験電車に搭載して、燃料電池を電源として1両で双方向に運転可能な車両を開発しました。(図3)
  • 走行用の電源とする燃料電池、駆動用インバータは車内に搭載し、高圧水素タンクは床下に取り付けました。
  • 主回路部に使用している機器は、すべてハードは一般のDC1,500Vの鉄道車両と同じものを使用しており、燃料電池電源に対応したソフト改良を行っています。
  • 今回は室内灯や電動コンプレッサー等の電力は架線から供給する構成としましたが、将来的には燃料電池出力を増大し、この電力も燃料電池から供給する構成を検討しています。

燃料電池試験電車の走行試験結果を紹介します。

なお、この技術開発の一部は、国土交通省からの補助金を受けて実施しました。

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参考文献

  1. 山本貴光、米山崇、小川賢一:「固体高分子型燃料電池の制御方法と最近の開発動向」、鉄道総研報告、第20巻、第7号、pp.41-46、2006.07
  2. 山本貴光:「トピックス 燃料電池車両の開発」、RRR、Vol.63、No.11、pp.39、2006.11