燃料電池ハイブリッド試験電車の基本走行性能確認

【開発した燃料電池ハイブリッド試験電車の概要】

これまで鉄道総研では化石燃料をエネルギー源とするディーゼル車両を置き換えることで、温室効果ガスの排出量を削減できる燃料電池鉄道車両の開発を進めてきました。2019年に完成した燃料電池とバッテリーを有する燃料電池ハイブリッド試験電車(図1)は、機器の小型化・高性能化により電車相当の走行性能と室内空間を確保しました。本試験電車の主な諸元を表1に示します。

【基本走行性能確認試験の概要と結果】

所内試験線にて最高速度 45km/h までの走行を実施し、燃料電池とバッテリーそれぞれを用いたハイブリッド構成によるエネルギー供給などの基本走行性能確認試験を実施しました。

・燃料電池の高出力化等による電車相当の起動加速度(2.5km/h/s)を確認しました。
・本試験電車は燃料電池とバッテリーのハイブリッド構成(図2)により、
 (a)加速時は両者のエネルギーでモーターを駆動
 (b)減速時は回生エネルギーと燃料電池のエネルギーでバッテリーを充電
 (c)だ行時、停車時は燃料電池からバッテリーを充電
 する制御を行っています(図3)。

 これにより、走行の前後でバッテリーの充電率を同じくするエネルギー供給が可能であることを
 確認しました(図4)。

・燃料電池2台の同時稼働でバッテリーを充電し、最大 139kW の出力を確認しました(図5)。

【今後の予定】

所内試験線での走行試験により、ハイブリッドシステムの制御方法を改良しエネルギー効率の向上を目指すことや、燃料電池への負担が小さい制御方法などの研究開発を行ってまいります。

※本開発の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

関連ページ

参考文献

  1. ニュースリリース「新しい燃料電池ハイブリッド試験電車の完成」
  2. ニュースリリース「燃料電池ハイブリッド試験電車の基本走行性能を確認」
  3. 「燃料電池ハイブリッド電車の駆動システムを小型化・高性能化する」 RRR 2021年10月号 Vol.78 No.10
  4. 「燃料電池ハイブリッド試験電車の高性能化」 鉄道総研報告 2020年5月号 第34巻 第5号