燃料電池・バッテリーハイブリッド鉄道車両の開発(2007~2008年度)

1.はじめに

燃料電池とバッテリーのハイブリッド電源により、回生エネルギーを利用できるようにした試験車両を製作し、走行試験を行いました(図1)。

2.車両の電気回路構成

燃料電池とバッテリーはそれぞれチョッパ装置を介して直流1,500Vの回路に接続されています(図2)。燃料電池の出力制御、バッテリーの充放電制御、モータを駆動するインバータの制御はハイブリッド制御指令部より行います。

3.燃料電池とバッテリー

鉄道車両駆動用電源を想定した固体高分子形の100kW級燃料電池システムです(図3)。固体高分子形の燃料電池は自動車などでも採用されていて、運転温度は70℃程度であり、起動時間は1分半程度です。このシステムの特長は、「金属セパレータの採用によるスタックのスリム化」、「加湿器や冷却セルを使わない特殊な水冷方式によるシステムの小型化」、「燃料の利用率向上のための水素リサイクル」などの機能を有していることです。

リチウムイオンバッテリーシステム(図4)は、公称電圧600V、公称容量60Ah(30Ah ×2並列)で、最大360kWまでの電力を充電・放電することができます。内部に監視装置があり、全セルの電圧・温度情報がここに集約され、管理されています。

4.試験結果

加速時にバッテリーと燃料電池から出力し、だ行時にバッテリーと燃料電池で補機電力を供給し、回生ブレーキによる減速時に燃料電池出力を抑制して回生エネルギーをバッテリーに充電し、停車後に再び燃料電池出力を上げてバッテリーを充電します(図5)。

この試験から、燃料電池のエネルギー変換効率は最大60%程度で、ディーゼルエンジンの35~40%程度よりも高くなることがわかりました。

※本開発の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

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参考文献

  1. 山本貴光、長谷川均、古谷勇真、小川賢一:「燃料電池・バッテリーハイブリッド試験電車の概要」、RRR、Vol.66、No.3、pp.2-5、2009.03
  2. 山本貴光、古谷勇真、米山崇、小川 賢一:「燃料電池試験電車の構内走行試験等による燃費及び効率の評価」、鉄道総研報告、第22巻、第2号、pp.53-58、2008.02