斜面災害を対象としたリスク評価手法

土砂崩壊や落石により発生する斜面災害が年間あたりに生じる確率的な回数(発生頻度の期待値)を算出する方法を提案し、これに加えて災害が発生した時の損失も考慮することで斜面災害の危険性をリスクという単一の指標で評価する方法を構築しました。

例えば、土砂崩壊による様々な災害の発生頻度期待値は、降雨時の運転規制の有無や斜面崩壊の有無などから想定される事象ごとの発生頻度期待値を求めることで算出できます。これらの発生頻度期待値を算出するために、斜面の崩壊発生確率分布や降雨頻度期待値分布の作成方法を構築しました。土砂災害のリスクは、上記で述べた災害の発生頻度期待値に応急・復旧費など災害時の損失を乗じることで算出できます。

斜面災害を対象とした防災対策の実施順位や方法は、斜面や岩塊の崩壊・崩落危険度や線区の重要度など別々の指標をもとに経験的に決定していることが多く、判断に困る場合があります。本方法を適用することで、定量的かつ合理的に防災対策の意思決定を支援できます。

参考文献

  1. 布川修、高馬太一、杉山友康:落石対策の意思決定支援手法、鉄道総研報告、第25巻、第7号、pp.35-42、2011.07
  2. 布川修、杉山友康、太田直之:降雨による斜面災害に対する防災投資の意思決定支援手法、鉄道総研報告、第23巻、第3号、pp.17-22、2009.03
  3. 杉山友康、布川修、太田直之:降雨による斜面崩壊発生確率の算定手法、鉄道総研報告、第23巻、第3号、pp.11-16、2009.03