自由打撃簡易貫入試験機

 既設のり面工の背面地盤がどの程度劣化しているのかを低コストに調査するための試験機として「自由打撃簡易貫入試験機」を開発しました。

本試験機は下記の特徴を有しています。

  1. 本試験機(図1)により、従来の水平ボーリング調査と比較して約1/20という低コスト、かつ約10分という短時間でのり面工背面地盤の劣化の程度を調査できます。
  2. 小型軽量な試験機であり、調査箇所への運搬が容易です。
  3. オプションの打撃力計測センサーを使用することで、より高精度な試験データを取得することができます。

 山間部の鉄道沿線には、建設時に地山を掘削してできた斜面(切土のり面)を風雨から防護する目的で、コンクリートなどによる表面保護工(のり面工)が施工されている場合があります。しかし経年により、のり面工の背面地盤が劣化し、崩れやすい土砂となると、この土砂がのり面工に負荷をかけ、最終的にのり面工を倒壊させることがあります(図2)。しかし、背面地盤はのり面工で覆われているため、背面地盤の状態は通常の目視検査では確認できません。このため上記で述べた試験機を開発しました。

 本試験機は重錘でロッドに一定の打撃力を加えることで、のり面工の既設の排水孔などから背面地盤に横方向にロッドを貫入させます(図3)。このとき、一定の貫入距離に達するまでの打撃回数から地盤の貫入抵抗値を把握できます(図4)。この貫入抵抗値のデータに基づいて、地盤の劣化部の範囲を特定します。調査結果をのり面工の安定性を判断する2次元図表(ノモグラム)に適用することで、簡便にのり面工の安定性を判定することができます(図5)。

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参考文献

  1. (公財)鉄道総合技術研究所:老朽化吹付のり面の補強工 設計・施工要領—吹付受圧板工法 FSCパネル—、(公財)鉄道総合技術研究所、2016
  2. 高柳剛、小井戸菜海、関栄、高橋章浩:受圧板が地山補強土の補強材間隔に与える影響の評価、土木学会全国大会、2014