地震時の構造物被害および走行安全性の予測法

本研究では、広域な鉄道システムの地震時安全性に関するスクリーニングを目的として、想定される地震に対して構造物の損傷及び車両の走行安全性を統一的な指標で連続的に評価するための予測手法を提案しました。

その考え方と手順を以下に示します(図1)。
①地震ハザード解析等により、地表面の最大加速度 PGA 、最大速度 PGV を予測します。
②地表面地震動のPGA 、PGVより地震動の卓越周期 T を T=2π(PGV/PGA)で算定します。
③対象構造物の降伏震度 khy 及び降伏周期 Ts と上記①、②で算定した PGA 、T を用いて、構造物の被害推定用のノモグラムから構造物の被害ランク(応答塑性率μ)を算定します。
④上記③で算定した応答塑性率μを用いて、式(1)により構造物の振動卓越周期T's 及び最大応答加速度PSAを算定します。

  μ<1 の時(弾性範囲)  T's=Ts  PSA=μ×khy×g
  (1)
  μ≧1 の時(塑性範囲)T's=√μ × TsPSA=khy×g

⑤車両の走行安全性を判定するノモグラムに T's と PSA をプロットし脱線の危険性を判定します。

本手法では、被害想定に必要な情報は、地震ハザードに関しては、地表面地震動の最大加速度 PGA と最大速度 PGV の2つのみです。

また、構造物に関しては、降伏震度 khy と降伏周期 Ts のみです。非常に少ないパラメータで被害を予測でき、また、構造物の被害予測と車両の走行安全性を、構造物の応答塑性率μを介して、互いに関連した指標を用いて連続的に評価できることが利点です。

参考文献

  1. 室野剛隆、野上雄太、宮本岳史:簡易な指標を用いた構造物および走行車両の地震被害予測法の提案、土木学会論文集A、Vol. 66、No.3、pp.535-546、2010 (※)

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