山梨実験線の建設と走行試験状況

山梨実験線の建設から第二期走行試験まで

1990年(平成2年)に、「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画」および 「超電導磁気浮上方式鉄道山梨実験線建設計画」について、当時の運輸大臣から承認を頂き、これに基づいて、東海旅客鉄道株式会社および鉄道建設公団(現:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)とともに、山梨実験線の建設を開始しました。

山梨実験線では、18.4kmの区間(先行区間)が完成した段階で、1997年(平成9年)4月から 第一期走行試験が開始されました。技術開発の目標として、

  1. 営業線500km/hに向けた最高速度550km/hまでの安定走行
  2. ピーク時間当たり片道一万人程度の輸送能力と定時性の確認
  3. 建設コスト、運営コスト、生産コストの低減と採算性を踏まえたシステムの経済性の確保
を設定しました。

1997年(平成9年)12月には、3両編成車両を用いて550km/hの当時の世界速度記録を達成し、5両編成でも、1999年(平成11年)4月に552km/hを確認しました。一方、3両2編成にて、1999年11月に相対速度1,003km/hの高速すれ違い走行を確認しました。

この3年間の走行試験および技術開発成果について、2000年(平成12年)3月に運輸省(現国土交通省)の「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」(以下委員会)において、「長期耐久性、経済性の一部に引き続き検討する課題はあるものの、超高速大量輸送システムとして実用化に向けた技術上のめどは立ったものと考えられる」との評価を受けました。

2000年(平成12年)4月から第二期走行試験として、「信頼性・耐久性の検証」、「コスト低減」、「車両の空力的特性の改善」の課題を解決するために、実用化を目指した走行試験を継続しました。併せて、より高度な安全性・信頼性・耐久性の検証を行い、2003年(平成15年)12月には3両編成にて設計最高速度を超える581km/hを記録し、高速すれ違い走行についても2004年(平成16年)11月に相対速度1,026km/hまで確認しました。さらには、連続走行試験において、2003年(平成15年)11月に朝7時から夜9時まで走行し、一日の走行距離2,876kmを達成しました。走行試験開始から2005年(平成17年)3月末までに、累積走行距離は434,000kmに達しました。

これら第一期、第二期8年間の走行試験成果に対して、2005年(平成17年)3月には同委員会から、「実用化の基盤技術が確立したと判断できる」との総合技術評価を受けました。

第三期走行試験以降

2005年(平成17年)4月からは、第三期走行試験として、さらなる長期耐久性の検証などを目的とした走行試験を継続するほか、さらなるコスト低減技術の開発や営業線適用に向けた設備仕様の検討などを進めています。

2006年(平成18年)12月には、同委員会が、2007年度(平成19年度)以降、概ね10年間において進めることが妥当である走行試験を含む技術開発についての提言を行いました。これを受けて、上記「基本計画」と「建設計画」の変更を国土交通大臣に提出し、2007年(平成19年)1月に承認されました。

この計画の変更の主な内容は以下の通りです。

まず、引き続き現行の基盤技術レベル仕様の長期耐久性を検証するとともに、2013年度(平成25年度)までに、山梨実験線全線を実用レベル仕様により建設します。さらに、実用レベル仕様走行試験用車両14両を製作して、2016年度(平成28年度)までに、実用化仕様レベルの長期耐久性検証、さらなるコスト低減のための技術開発、および営業線適用に向けた設備仕様の検討に必要な試験等を実施することとしています。

2009年(平成21年)には、同委員会にて、長期耐久性の検証、メンテナンスを含むさらなるコスト低減、および営業線適用に向けた設備仕様の検討の3課題について、最新開発状況を評価し、環境対策、異常時対応、保守体系について追加的に深度化した検討・評価を行いました。その結果、同委員会は同年7月に、「超高速大量輸送システムとして運用面も含めた実用化の技術の確立の見通しが得られており、営業線に必要となる技術が網羅的、体系的に整備され、今後詳細な営業線仕様及び技術基準等の策定を具体的に進めることが可能」との評価をとりまとめました。

※ 山梨実験線の詳しい情報については、東海旅客鉄道株式会社のウェブサイトをご覧ください。