14. 速度300km/h超に対応した高速シンプル架線

新幹線用ヘビーコンパウンド架線では補助ちょう架線張替など大規模な更新時期を迎えています。これを機に、部品点数が少なく保守性にも優れるシンプル架線が最高速度300km/h未満の線区で採用されるようになりました。さらに、これを超える線区においても導入の要望があげられています。 そこで、300km/h超の運転速度に対応した2つのタイプの新しい高速シンプル架線を開発しました(表1)。

速度300km/h超におけるシンプル架線は、コンパウンド架線と比較して電柱周期でのパンタグラフの上下振動が大きくなりやすく、これによる集電性能の低下が問題でした。
そこで、架線の総張力を従来のシンプル架線よりも高くすることによって電柱間中央の架線の上下ばね定数を増加させることによって、電柱周期でのパンタグラフ上下振動を抑制することとし、走行速度に応じて320km/h用と360km/h用の2種類の架線構造を開発しました(図1)。
320km/h用では、トロリ線の波動伝播速度を安定集電に関する目安である走行速度の1.4倍程度とするため、断面積170mm2、張力22.54kNのトロリ線を選定しました。
360km/h用では、摩耗に対する保守余裕は減少しますがトロリ線断面積を 130mm2とし、その張力を 24.5kNとしました。

これらを営業線に架設して集電性能確認試験を実施した結果、離線率やトロリ線押上量は目安値以内で問題がなく、トロリ線の摩耗状況や施工性が良好であることを確認しました(図2)。