13. 車輪フランジ部の摩耗を低減する踏面摩擦材

 車輪フランジ部の摩耗は、曲線区間でのレールとの接触により促進され、車輪削正回数の増加によるメンテナンスコスト増大の原因となるため、抑制することが必要です。また、騒音や脱線余裕度の点からは摩擦係数が低いことが望まれます。
 その解決のためには車輪フランジ部の潤滑が必要で、塗油などの手法がありますが、空転滑走、レールへの油の付着、塗布位置の調整作業などの課題があり、適用が難しい場合があります。
 そこで、固体の潤滑材を使用してフランジ部の潤滑と踏面部の増粘着を両立させる、新しい踏面摩擦材(以下、踏面調整子という)を開発しました。

 踏面調整子は、車輪踏面部には増粘着研磨材が、車輪フランジ部には固体潤滑材が接触するよう構成されており、既存の踏面清掃装置を改造することなく取付けが可能です(図1)。
 踏面調整子は一体成形されており、固体潤滑材と増粘着研磨材の境界部分を含む全体が、増粘着研磨子等の強度基準を満足します。
 なお、増粘着研磨材の成分は従来から実績のある増粘着研磨子と同じです。

 踏面清掃装置によって垂直方向に作動することから、車輪径が変化した際の位置調整は不要です。
 また、踏面調整子の摩耗率は増粘着研磨子と同等で、新たに交換寿命を管理する必要はありません。
 塗油などが適用できない振子式特急車両に搭載した結果、非搭載編成と比較して約40%の車輪フランジの摩耗率低減を確認しました。
 また、フランジ部の摩擦係数の低下を確認しました(図2)。