15. 常時微動を用いた橋脚安定性モニタリング手法

 橋脚の安定性の評価には、衝撃振動試験で得られる橋脚の固有振動数を用いることがありますが、この試験は重錘による打撃を要するため、作業性の観点から常時監視するモニタリングに適用することは困難です。
 この課題を解決するために、常時微動を用いたモニタリング手法を開発してきましたが、地盤振動が大きい条件では橋脚振動が地盤振動に埋没してしまうため適用できませんでした。
 そこで、従来1か所で計測していた常時微動を天端の2か所(図1)で計測することで地盤振動を推定し、それを取り除くことで地盤振動の影響が大きい環境下でも橋脚の固有振動数をモニタリングできる手法を開発しました。

 新しく開発した手法(図2)は、
 ①橋脚天端の上下流端部2か所で常時微動を計測し、
 ②計測値から地盤振動を推定し、
 ③計測値を推定した地盤振動で除すことで地盤からの振動を取り除き、
 ④理論式で曲線回帰させることで橋脚の固有振動数を同定します。

 開発手法を12基の実橋脚へ適用して固有振動数を同定し、別途実施した衝撃振動試験で得られた固有振動数と比較したところ、健全性が非常に高かった1基を除いて、地盤からの振動が大きい環境下の橋脚でも1Hz以内の誤差で11基が同定可能でした。

 本手法は衝撃振動試験による固有振動数の事前測定が不要であり、作業性が向上します。
 さらに、常時微動を用いるため、増水時の橋脚モニタリングにも適用できます。