2. 踏切事故時の車体構造の衝突安全性評価指標

 我が国の車体構造の設計基準には、衝突安全性を評価するための指標が明示されていません。
 一方、欧米では評価指標が定められていますが、事故傾向や車体強度および座席(シート)構造など車内設備の設計仕様が日本と異なっています。
 そこで、国内の事故統計や車両の仕様を基に、踏切事故を想定した衝突解析を多様な条件で行うことにより、国内の実情に即し、かつ、乗客の傷害度と相関の高い評価指標を提案しました。

 列車と大型ダンプカー(車両重量11トン、積荷重量0~13.75トン)との衝突時に着座した乗客にどの程度の傷害が生じうるかを、列車モデルと大型ダンプカーのモデルを使って解析により推定しました(図 1)。 
 これらのモデルの解析精度は衝突試験により検証されており、解析パラメータは列車速度、衝突位置・角度、大型ダンプカーの総重量とし、回転クロスシートに着座した乗客(以降、クロス乗客)を対象としました。各条件で推定された傷害の程度と、車体に発生する衝撃減速度の積分値(図2、減速度積分値と呼ぶ)の相関係数は0.95(図3)で、欧州指標の衝撃減速度の平均値(相関係数0.90)や米国指標の衝撃減速度の最大値(相関係数0.81)より高い相関がみられました(図4)。
 以上のことから、減速度積分値を評価指標として提案しました。

 車体設計時の衝突解析で得られる減速度波形に、提案した評価指標を適用することで乗客被害軽減に寄与します。