4. 車上計測による共振橋りょうの抽出法

 列車の高速化や橋りょうの劣化に伴い、列車通過時に大きな振動が生じる橋りょう(共振橋りょうと呼ぶ)が増加しており、乗り心地や付帯設備への影響が懸念されています。特に振動が大きい場合は対策を要するため、共振橋りょうを抽出する必要がありますが、そのためには膨大な数の橋りょうのたわみを一つずつ地上から測定しなければならず、非効率でした。
 そこで、車上計測データにより共振橋りょうを地上での測定なしに抽出する手法を開発しました。

車上計測による抽出では、軌道変位などの他成分から橋りょうの振動を分離することが課題でした。
 そこで、最後尾車両の通過時にのみ卓越する共振橋りょう特有の振動成分があることに着目して、この振動成分を強調するフィルタ処理と包絡線処理に加え、先頭と最後尾車両の差分処理を行うことで、橋りょう振動成分のみを分離し、共振橋りょうの抽出を実現しました(図1)。
 本手法は乗り心地管理用の動揺加速度のほか、慣性正矢軌道検測装置の検測データも利用できます。実路線での適用結果と地上でのたわみ測定の比較から、軌道保守管理データベースシステム(LABOCS)上で提案手法により共振橋りょうを抽出できることを検証しました(図2)。

 本手法は、新幹線速度向上時の共振橋りょうの有無の評価に活用できるほか、共振橋りょう上で生じる大きな振動により損傷が生じやすい電車線設備のスクリーニングにも活用できます。