5. 変位センサーによる地震後の橋りょう支承部損傷検知

 地震が発生し、揺れの大きさが鉄道事業者の定める規制値を超えた場合、目視点検等により設備に異常がないことを確認する必要があります。しかし、高所・狭あいな橋りょうの支承部は点検に多大な労力や時間が必要な上、運転再開のための明確な判断基準がありませんでした。
 そこで、列車速度に対するゴム支承の地震後の抜け出し量の許容値を解析により明らかにし、抜け出し量を遠隔から検知可能な変位センサーを開発しました。

 まず、鉄道橋りょう・高架橋に設置されるゴム支承を対象に地震後の被害事例を調査し、ゴム支承の抜け出しが走行安全性や支承の復旧性に影響することを明らかにしました。この抜け出し量と走行速度をパラメータとした解析により、走行安全性や支承の復旧性の限界値を満足する抜け出し量の許容値を算定し、これを指標として運転再開の可否を判断する方法を提案しました。例として、抜け出し率αが30%の場合80km/h までの走行が可能と判断できます(図 1)。
 また、抜け出し量を地震発生後すみやかに、遠隔から検知可能な変位センサーを開発しました(図2)。
 本センサーは、独立電源によって抜け出し量を測定し、測定データをネットワークサーバーに転送することで、近接目視を行うことなく遠隔地から容易に損傷状況を把握することが可能です。

 これにより、支承部の損傷検知と運転再開の判断が可能となり、地震後点検の迅速化と早期運転再開の支援に活用できます。