15. 沿線信号設備電子機器の寿命評価手法

 鉄道沿線で使用される信号設備を構成する電子機器は、通電による動作ストレスに加え、温湿度、腐食性ガス、振動など、様々な環境ストレスの影響を受けることが想定されます(図1)。
 このため、劣化の主要因や傾向を把握することが難しく、更新時期の適正な評価が課題でした。

 そこで、沿線の信号設備が使用される環境と故障の実態を調査し、機器の寿命に影響する劣化要因は、通電による動作ストレスと温湿度の変化による環境ストレスが支配的であることを明らかにしました。
 さらに、調査結果を基に、電子機器を構成する電子部品自体と基板のはんだ接合部で発生するクラックに着目して寿命を評価する手法を開発しました(図2)。
 この手法では、部品メーカが実施した信頼性試験結果を活用して使用環境条件に応じた電子部品の寿命を算出するとともに、温度変化に起因するはんだクラックを再現する加速試験によってはんだ接合部の寿命を算出し、それぞれの算出結果から弱点箇所を特定して機器の寿命を予測します。
 本手法を、直射日光を遮る遮蔽板の有無によって使用条件が異なる2種類の器具箱内の踏切用列車検知装置に適用して評価を試行し、各条件での弱点箇所を特定でき、予測寿命を算出できることを確認しました(図3)。

 鉄道事業者が本手法を表計算ソフトに実装した評価ツールと手順書を利用することにより、鉄道沿線で使用される信号用電子機器の寿命を定量的に予測でき、更新計画を策定することができます。
 また、信号用以外の電子機器にも応用が可能です。