9. 低コストで省力化可能な駆動用機器潤滑油分析装置

 エンジンなどの駆動用機器内部に発生する異常摩耗や焼付きなどの兆候を検知し、営業線上での機器の損傷を防止する手段として、潤滑油中に混入した鉄粉の濃度を、発光分析装置などを用いて分析する方法があります。しかし、現在の装置は大型で価格が高く、操作やデータ解析に習熟を要し、分析装置を配備できる箇所が拠点工場などに限定されます。そのため、採油した試料を分析場所まで輸送する必要があり、分析結果を得るまでに時間を要するという問題があります。

 そこで、検修現場における機器の状態診断に適用可能で、取扱いが容易な潤滑油分析装置を開発しました(図1、図2)。装置には、油を内部のコイルに通過させることで電気的に油中の鉄分濃度を分析できるセンサを内蔵しています。このセンサを用いた異常判定の正確性は、従来の発光分析法を用いる場合と同等以上です。
 また、検修現場での使用を考慮し、車両近傍に容易に設置可能な構造としたほか、装置内部の油経路を短縮することにより、小型化と分析時間の短縮を図りました。

 これにより、車両近傍で容器に採油せずに約20分で潤滑油中の鉄分濃度分析を行うことが可能になり、従来法と比較して分析時間を大幅に短縮することができ(図3)、装置の価格も従来の発光分析装置の5分の1以下に抑えることができました。
 また、このセンサは車両用機器への搭載が可能であり、今後リアルタイムでの潤滑油中の鉄分濃度監視への適用も期待できます。