23. 蛇行動発生速度の解析的な評価法

 台車がある速度で突然左右動を起こし、これが発散してしまう現象を「蛇行動」と呼びます。蛇行動は高速で走行する車両の走行安全性に大きな影響を及ぼすため、新車の開発時などでは蛇行動発生速度が営業速度より十分に高いことを車両試験装置で確認しますが、試験における輪軸の左右変位の初期振幅の与え方により、蛇行動発生速度が異なることが知られていました。この初期振幅と蛇行動発生速度の関係を蛇行動限界曲線と呼んでいます(図1)。これまで両者の関係は理論的に明らかにされていませんでした。
 これに対し本研究では、蛇行動限界曲線を車両諸元や車輪踏面形状などから、解析的に算出する手法を構築しました。

  図1で、蛇行動限界曲線の上側では蛇行動は発散、下側は収束となり、その境界である蛇行動限界曲線上においては、理論的には収束も発散もせず定常振動をし、そこから少しでもずれてしまうと収束または発散に至るような不安定な振動状態が存在することがわかりました(図2)。
 そこで、運動モデルに非線形計算手法を適用し、蛇行動限界曲線上の点に相当する定常振動の振幅を算出する手法を構築しました。
 本手法では、蛇行動限界曲線が大局的には走行速度の増加に対して単調に減少するという性質を用いることにより、効率よく解を得ることができます。
 本手法により、輪軸の初期振幅に応じた蛇行動発生速度を解析的に評価することが可能となります。

 また、踏面勾配が一定の円錐踏面と比較して、レールとの接触位置によって踏面勾配などが変化する円弧踏面のように非線形性が増す場合、蛇行動が発生する速度域が広がることを明らかにしました(図3)。