27. 摩擦熱に起因する集電材料の摩耗メカニズム解明

 トロリ線やパンタグラフすり板などの集電材料は、接触力や走行速度、集電電流などのさまざまな要因によって摩耗します。これまで、集電電流によるジュール熱の影響については明らかにされてきましたが、しゅう動による機械的な摩耗機構については十分に解明されていませんでした。

 そこで、しゅう動中の模擬トロリ線とすり板間の接点温度を測定可能な摩耗試験機を新たに開発し、摩擦熱による接点の温度と摩耗形態の関係を調査しました。
 その結果、機械的な摩耗には最高温度および平均温度によって4種類の形態が存在すること、温度による材料の軟化が摩耗形態の発現にとって重要な要因であることを明らかにしました(図1)。
 特に、摩耗形態Ⅱではトロリ線表面が剥離するように顕著に摩耗することを確認しており、摩擦熱が小さく平均接点温度が上昇しない低速区間におけるトロリ線の著大摩耗の要因と考えられます。

 さらに、摩擦熱を熱流束として接触面に入力することで接点の温度上昇量を算出可能な数値解析モデル(図2)を構築し、測定した接点の平均温度と解析値が整合することをシミュレーションで確認しました(図3)。
 今後、本解析とこれまでに構築したジュール熱による温度上昇解析を統合し、実フィールドで発現する摩耗形態の予測手法の構築や、摩耗形態の制御による摩耗抑制対策の提案など、集電材料のメンテナンスコストを低減するための技術開発を進める予定です。