29. 生理指標による運転士の心身状態変化の検出

 安全な列車運行を維持する上で、一人で乗務する運転士の心身が常に良好な状態であることが重要です。
 そこで、生理データからパニックなどの過緊張や覚醒低下など安全運行に影響する可能性のある状態を検出する手法を提案しました。
 この検出手法の実現は、運転士が良好な状態に戻るための適切なサポートに繋げることを可能にします。

 これまで、生理データは個人差が大きく、高い精度が求められる安全支援への適用が難しいとされてきました。
 そこで、リラックス時に活性化し緊張時に抑制される自律神経の副交感神経系の活動を推定できる、心拍と呼吸の2つを用いる生理指標を提案しました。
 従来指標は15~30秒間の計測を必要としますが提案指標は呼吸周期(約3秒)ごとに算出できます。非緊張指標として覚醒レベル1で従来指標より出現率が向上、レベル4、5で出現率が低下し推定精度も向上しました(図1)。
 呼吸計測は驚愕反応や呼吸長など心身状態を反映する情報も併せて得られる利点もあります。

 さらに、提案指標を含めた5つの指標から個人ごとに適した有効指標を自動で選定し(表1)、選定した有効指標を用いて心身の緊張(心理的動揺など)と非緊張(覚醒低下など)の両方を高い精度で判定する方法(総合判定法)を考案しました。
 図2のように、個々の指標の判定(紫枠)では正しい判定の出現率や誤検出の多さに問題がありますが、総合判定法による判定(桃枠)は、緊張・非緊張とも高い出現率と低い誤判定を両立しており、高い確度で判定できていることがわかります。