28. 数値シミュレーションによる摩擦材料の物性評価手法

 パンタグラフすり板やブレーキパッドなどの鉄道用摩擦材料は複数の材料でできています。このような材料では含まれる材料の組み合わせや割合、配置などの微視的なスケールでの構造の違いにより物性や挙動が変わります。そのため、材料の割合のみを用いる従来の物性推定手法では精度の高い推定が困難であり、新材料を開発する際には、試作と物性の測定を繰り返し行う必要がありました。
 そこで、X線CTによる透過画像を用いて微視的な構造を反映した解析モデルを作成し、材料物性をFEMにより精度よく算出する手法を構築しました(図1)。

 構築した手法をパンタグラフすり板材料の一つである銅含浸型カーボン系材料に適用し、従来の推定手法に比べて精度よく物性を再現できることを確認しました(図2)。
 また、得られた解析モデルを用いて微視的スケールでの応力や温度の分布を算出できるようになりました(図3)。

 本手法により、材料を試作する前にその物性の推定が可能となり、材料開発の効率化が期待できます。
 また、実測が困難な微視的なスケールでの応力や温度などの内部状態を把握できることから、摩耗や損傷の現象解明に活用できます。