4. 車輪使用限界温度の同定と在姿での安全性判定手法

 車輪は、通常の踏面ブレーキ熱負荷に対して十分な熱容量をもちますが、踏面ブレーキ空気弁の故障等で異常加熱されると、引張残留応力が生じ、最悪の場合には割損に至るおそれがあります。
こうした状況が生じた場合、車輪の変形や塗料のはがれ等から定性的に状態を推定していましたが、限界温度や変形挙動は各車輪で異なるため、より定量的な評価指標が求められていました。

 そこで踏面ブレーキ用の各種車輪について数値解析を行い、温度上昇と車輪が塑性変形する限界温度の関係を明らかにするとともに、限界温度を超えて発生する残留応力を車輪の変形量から簡易に推定する手法を構築しました(図1)。
さらに、変形が生じにくい車輪にも適用できる方法として、超音波(音弾性)式の装置を用いた残留応力の推定手法を開発しました。
この手法では、測定原理にもとづき、同一編成内の同種・同径の車輪との測定値の差から応力状態を判定できます(図2)。

 これらの手法により、車輪の異常加熱が発見された場合に、車両在姿のまま非分解・非破壊で高精度に車輪の応力状態を把握することができ、安全を担保しつつ、運用継続、車輪交換、車両回送の可否等を迅速に判断することが可能となります。