6. 変電所と列車の電流照合による高抵抗地絡検知システム

 直流き電区間での電車線設備の健全性監視における課題のひとつに、高抵抗地絡故障(飛来物等に起因し支持物等を介して大地へ電流が漏洩する故障)の検知が困難であることが挙げられます。
既往の検知手法として、電車線に放電ギャップ等を追加する手法や変電所のみで電流を監視する手法が提案されていますが、追加設備の保全が必要になることや小電流の検知が困難である等の課題があります。
そこで、変電所の送出電流総和値と列車の集電電流総和値との差分を、列車位置を考慮して監視・照合することで高抵抗地絡を検知するシステムを構築しました(図1)。

 本システムでは、変電所と列車に搭載した計測装置から高精度時刻情報付き電流情報、列車の位置座標情報等をサーバに逐次送信します。
次に、列車の位置座標情報と電力供給区間の紐付けを行い、電力供給区間ごとに変電所送出電流と当該区間に在線する全列車の集電電流をそれぞれ合算した上で変電所と列車の電流差分を照合し、電流差分の積算値が閾値を超えた時点で地絡判定します。

 既に開発した鉄道向け統合分析プラットフォームのデータ統合やキロ程変換機能を活用するモジュールとして実証システムを構築し、所内試験線で実施した検証試験により約160アンペアの列車負荷に対し約50アンペアの地絡故障が検知可能であることを確認しました(図2)。
列車負荷が数千アンペア程度となる営業線においても高精度電流センサを適用することで数百アンペア程度の地絡故障を検知可能です。

 検証結果を踏まえ、本手法を変電所・列車に実装するための基本仕様と設計ガイドをまとめました。
本手法は、列車位置・電流等を収集・伝送できる環境があれば実装可能です。