バラスト軌道の沈下・流動解析モデル「DEMCS-track」

軌道力学研究室

バラスト軌道における浮きまくらぎや道床流動などの局所的劣化のメカニズムを解明するためには、実現場の境界条件と外力条件の再現が必要です。しかし、試験装置による再現が困難な条件も多いことから、補完的手段として、道床沈下・流動の再現に最適な離散体による解析モデルを開発しました。

特徴・諸元

1.バラスト軌道

バラスト軌道(有道床軌道ともいう)においては、まくらぎと路盤の間に、単粒度砕石で構成された‘道床バラスト層’が敷設されています。
この道床バラスト層は、材料費が安価でありながら様々な機能を有する一方、局所的に促進される沈下や摩滅によって’浮まくらぎ’という現象が発生し、軌道保守現場の長年の悩みとなっています。
また、列車の高速化に伴い、バラスト軌道のカント区間においては、道床バラストの流動現象が見られることがあります。
これに対して従来、多くの実験的検討が行われ、様々な観点での知見が得られていますが、試験装置にも制約があり、実現場の境界条件や外力条件を完全に再現することは、依然として困難です。

2.バラスト軌道の離散体モデル

離散体モデルとは、粒子集合体を一つの連続体ではなく、粒子一つ一つを個別の要素でモデル化したモデルで、特に大変形の再現において活用されています。
離散体モデルをバラスト軌道のモデル化に活用することで、実験では再現が困難な境界条件や外力条件を再現することが可能となります。(図1、図2)
また、道床バラスト層の内部の粒子間接触力の分布の変化や、バラスト粒子の運動を観察することも可能になります。

3.活用事例

3.1 普通継目部における粒子間接触力の観察

普通継目部を列車が通過した際の道床バラスト層内の粒子間接触力分布を観察しました。(図3)
図3-a)は普通継目部で対策工法を施していない条件における結果、図3-b) は、普通継目部の大判まくらぎ下に弾性材を敷設し、軌道パッドを低ばね化した条件における結果を示しています。
軌道弾性化により、継目部直下の粒子間接触力が減少することが確認できます。

3.2 カント区間におけるバラスト粒子の左右非対称な挙動の観察

カント区間において、カント不足方向に外力が作用した場合のバラスト粒子の挙動を観察しました。(図4)
図より、道床厚がより厚い外軌側において、バラスト粒子の移動が著しくなる傾向が確認できます。

関連ページ

その他の関連コンテンツ