蛇行動の発生メカニズムに関する研究

鉄道車両の固有現象の一つに、蛇行動と呼ばれる自励振動があり、ある一定の走行速度を超えた場合に発生します。この蛇行動が発生する速度(蛇行動限界速度)は、通常は営業速度よりも十分高いため問題となりませんが、一旦、蛇行動が発生すると大きな振動を伴うため、安全性に影響を及ぼす恐れがあります。蛇行動を含め走行時の直進性を走行安定性と呼びますが、台車の基本性能としてこれを把握しておくことは重要です。本研究では実物台車を用いた定置試験と理論解析の両面から蛇行動の発生条件の解明に取り組んでいます。

鉄道総研所有の車両試験装置(図1)で実際に蛇行動を発生させる試験を行った結果、蛇行動発生の条件には、走行速度だけでなく、輪軸の左右変位(振動振幅)の初期値の大きさも影響することが分かりました(図2)。

測定データを分析した結果、蛇行動発生速度が変位依存性を持つのは車輪/レール接触状態などの非線形性の影響によるものと考えられました。そこで、非線形性を考慮した運動モデルを用い、蛇行動の発散と収束を分ける境界線を求める解析手法を構築しました(図3)。さらに、車輪の摩耗を想定した踏面形状に対して本手法を適用して解析を行いました。その結果、設計形状と比較して走行安定性が低下することを確認し、車輪摩耗が走行安定性に及ぼす影響を評価できることがわかりました。

このように、実験と解析を組み合わせ、未解明な部分を明らかにすることで、蛇行動限界速度を精度よく推定できる解析方法を構築し、新しい台車を開発する場合の走行安定性評価手法の確立を目指して研究を進めています。