台車挙動による走行安全性評価に関する研究

鉄道車両の脱線に対する走行安全性は、従来から専用輪軸を用いた輪重・横圧測定(PQ測定)で評価します。このPQ測定では輪重や横圧を直接測定できるものの、準備や測定には多くの費用や労力を要し、実施の機会が限られます。

そこで、簡易な走行安全性評価手法の開発を目的として、輪重横圧推定式1)などの理論と、 6軸慣性センサーなど(図1)、比較的容易に測定可能な台車挙動の実測データを活用して輪重、横圧を推定する手法を研究しています。

図2に営業線での走行試験において従来手法により測定した実測値と本手法による推定値との比較を示します2)。台車枠慣性センサー出力による推定値は実測値とおおむね一致しましたが、左右クリープ力の急変に伴う横圧変動成分の推定に課題が残りました。

そこで、左右クリープ力の推定精度向上のため、軸箱に慣性センサーを取り付けて(図3)、台上試験を行いました。その結果、軸箱に設置した慣性センサーの出力を用いた推定横圧は、PQ測定による実測値と相関が高いことを確認しました(図4)。

今後も横圧や輪重の推定精度の向上に取り組み、台車挙動による走行安全性評価手法の確立を目指します。

参考文献

  1. 国土交通省 事故調査検討会、帝都高速度交通営団 日比谷線中目黒駅構内列車脱線衝突事故に関する調査報告書、2000.10(※)
  2. 飯田忠史、台車挙動測定による走行安全性評価手法、鉄道総研報告、Vol.34、No.5、pp.23-28、2020

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